2023 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌の異所性感染に着目したHIV持続感染の慢性炎症維持機構の解析
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22K20926
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石坂 彩 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70746859)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | HIV / 慢性炎症 / 細胞外小胞 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微弱なウイルス複製に伴う持続的な腸管免疫の活性化と、腸管粘膜上皮の腸内細菌叢の破綻に起因すると考えられる腸管バリア機能の低下 (leaky gut) による細菌群の血中への侵入(腸内細菌の異所性感染)が、相加的かつ互いに刺激しあう悪循環が起きている可能性を念頭に、腸内細菌叢の破綻を背景とした慢性炎症の維持機構についての検証に取り組んでいる。 腸内細菌が分泌する細胞外小胞にはDNAや二次代謝産物など細菌由来の生理活性物質が含まれている。今年度は急性ウイルス感染症のモデルとしてSARS-CoV-2 感染者の便検体を用いて、感染後の分泌BEVの変化や病態との関係について解析を行った。また、同一の便検体を用いて腸内細菌叢を構成する細菌についても解析を行い、BEVの分泌量の変化と腸内細菌叢の変化の関連について解析した。健常人およびSARS-CoV-2 感染者の便検体から細菌ゲノムおよび腸内細菌由来の細胞外小胞(BEV)を精製し、細菌ゲノムおよび小胞に含まれているDNAの16S rRNA遺伝子 V3-V4 領域を次世代シークエンサーで解読した。これにより、腸内細菌叢の構成やBEVの分泌元細菌の同定を行った。解析の結果、BEV分泌量の変化は、腸内細菌の存減に単純に依存するものではないことや、特定の細菌由来のBEVの分泌量がSARS-CoV-2 感染者において増加・減少していることや、分泌量と病態に関連があることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検体数の関係から、SARS-CoV-2 感染者の便検体を用いて病態や炎症レベルとBEVの関係について評価を行った。当初の予定であるHIV感染者における解析は、今年度確立できた検出系を用いて着手する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌叢の破綻と慢性炎症を結びつける分子機構については未解明な点が多いが、細菌の放出する多様な生理活性物質が含まれる細胞外小胞が細菌叢の破綻によって変化することで粘膜免疫細胞の活性化につながる可能性がある。今後は、血漿中の炎症性サイトカインの分泌量とBEVの校正についての比較検証を行う。 また、今年度確立した技術を用いてHIV感染者におけるBEVの構成と慢性炎症に関する解析を展開する。
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Causes of Carryover |
今年度、HIV感染者のBEV解析が行えなかったため、次年度使用額が生じた。次年度にHIV感染者の便検体を用いた解析のために使用する。
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[Presentation] 非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者に合併する腫瘍に関する研究2023
Author(s)
古賀道子, 福田あかり, 石坂 彩, 田中貴大, 保坂 隆, 伊藤俊広, 江口 晋, 遠藤知之, 柿沼章子, 木内 英, 後藤智巳, 高橋俊二, 武田飛呂城, 照屋勝治, 花井十五, 藤井輝久, 藤谷順子, 三田英治, 南 留美, 茂呂 寛, 横幕能行, 渡邊 大, 渡邊珠代, 四柳 宏
Organizer
第37回日本エイズ学会学術集会
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