2022 Fiscal Year Research-status Report
p53搭載腫瘍融解ウイルスの治療関連バイオマーカー探索と効果予測システムの構築
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22K20942
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
門脇 大輔 岡山大学, 大学病院, 医員 (30966255)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | がんウイルス療法 / バイオマーカ― / 腫瘍溶解ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
がんウイルス療法は、高い腫瘍特異性を有し、既存の治療法とは異なるメカニズムで 細胞死を誘導する新規治療法のひとつである。現段階では、がんウイルス療法における普遍的な、 あるいは個々のウイルス治療薬に特異的なバイオマーカーの報告はなく、独自のバイオマーカー探索が必要と考えられる。本研究では、約50種のヒトがん細胞株を使用して、OBP-702の治療関連バイオマーカーの同定を行い、その効果予測システムの構築を目指す。 令和4年度は、34種の消化器癌および13種の非消化器癌の計47種類の細胞株を用いて、OBP-702にOBP-301およびAdp53を含んだ各ウイルスに対する感受性をXTTアッセイで解析した。IC50値を算出し、各ウイルス間で比較するとOBP-702は全ての細胞株で他のウイルスより優れた抗腫瘍効果を示し、その抗腫瘍効果は他の2つのウイルスと相関を示した。 さらにOBP-702の抗腫瘍メカニズムを「ウイルス感染」、「ウイルス複製」、「p53」の要素に分け検討し、抗腫瘍効果への関連が予測される因子について細胞株ごとに評価を行い、IC50値との相関を評価した。「ウイルス感染」に関連する因子としてCoxsackie-Adenovirus Receptor(CAR)の発現率をflow cytometryで評価したところ、OBP-702のIC50値との間に相関を示した。「ウイルス複製」に関してはKi67発現との相関がflow cytometryによる評価で明らかになった。また、47種の細胞株の内、13種にp53遺伝子の変異を認めたが、p53変異型細胞株ではAdp53が有意な抗腫瘍効果を示し、p53変異型の癌細胞に対してより強い抗腫瘍効果があることが予測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、様々な癌腫の細胞株に対して網羅的な解析を行うことによって、今後バイオマーカーに関する検索を行う上での基盤となるデータベースの構築を行った。また、CAR、Ki67、p53遺伝子変異がOBP-702の抗腫瘍効果に関連する因子であることが明らかになった。これらの因子がOBP-702の効果を予測するバイオマーカーとなりうる可能性が示唆され、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は構築したデータベースを用いて、さらなる効果予測因子の探索を行う。また、特定した因子を基に効果予測システムの構築を行う。構築した効果予測システムは臨床検体を用いたPDXモデルを作成して、実際の治療効果と比較し検証を行う。
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Causes of Carryover |
50種類近くの細胞株すべての効果予測因子の検索が完了しておらず、次年度使用額が発生したため、引き続きの実験を継続予定である。 令和5年度は構築したデータベースを用いて、さらなる効果予測因子の探索を行う。また、特定した因子を基に効果予測システムの構築を行う。構築した効果予測システムは臨床検体を用いたPDXモデルを作成して、実際の治療効果と比較し検証を行う。
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