2022 Fiscal Year Research-status Report
ラットCLiPを用いた肝小葉様構造の作製および移植の実施、構造並びに機能評価
Project/Area Number |
22K20945
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
哲翁 華子 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (90966847)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 肝胆道複合化シート / CLiP / 胆道構造 / シート移植 / 肝不全モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
重篤な肝疾患に対する治療法として、肝臓移植に代わる再生医療技術の開発が行われている。本研究では胆汁排泄能を有する肝細胞シートを新たに開発し、その性能ならびに移植後の胆道構造・肝機能の評価を実施した。 まず、低分子化合物刺激により脱分化させたラット由来肝前駆細胞(Chemicaly induced liver progenitor; CLiP)より胆管様ネットワーク構造を有する足場組織を誘導しその上にラット肝細胞を播種することで肝胆道複合化シート(Hepato-Biliary sheet; HBS)を作成した。HBSと比較するため、胆管様ネットワーク構造を含まない肝細胞シート(Hepatocyte Sheet; HS)も作成した。HBSは免疫蛍光染色で胆道構造と肝細胞が一体となり構築されたことを確認した。また機能面では胆汁排泄能を有し、アルブミン合成能、薬物代謝能はHSと比較しを有意に高かった。 作成したHBSを免疫不全マウスの肝表及び皮下に移植し構造を評価した。肝表・皮下移植共にHBS内に管腔構造を認めた。免疫染色にて管腔構造はCLiP由来の胆管構造であると確認し、その周囲にはラット由来肝細胞を認め、組織への生着を確認した。また移植後は無血管成分であるHBS内に血管成分が誘導されることを確認した。 続いて免疫不全肝不全モデルマウスの肝表にHBSを移植すると、血中ラットアルブミン値がHS移植と比較し有意に高値であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、ラット肝細胞由来肝前駆細胞(CLiP)の作成、CLiPから胆管構造への誘導、そしてHBSの作成の確立及び移植後の構造の確認であった。本年度の取り組みにおいて安定的なCLiP作成、胆管構造への誘導、HBSの作成が可能となった。またHBSの評価として胆道構造に加え胆汁排泄能を有することを確認でき、アルブミン分泌能、薬物代謝能はHSと比較し有意に高いことを確認できた。さらに皮下及び肝表に移植することでHBS由来のシートが生着することを実証した。これらの結果により肝不全モデルマウスへHBSを移植することで肝機能の補填が得られると期待され、血中ラットアルブミン値が上昇することが示された。肝不全モデルマウスの作成に時間を要したが、これらの実施内容は当初の計画から大きく遅れることなく進んでおり、本研究目標の第一段階をクリアした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果をもとに、HBS移植後の構造の解析ならびに肝機能の補填を実証するため、以下の検討を実施する。 (1)HBS移植後の構造の解析:HBS由来胆管およびホストマウス由来胆管との接続等の確認を行うため、免疫蛍光染色を実施する。 (2)肝機能の補填:血液検査による凝固因子や肝胆道系酵素測定を実施する。また、PCR法により肝表へのHBS及びHS移植部、非移植部における各種トランスポーターの発現の解析等を実施する。
|
Causes of Carryover |
移植に使用する肝不全モデルマウスの作成時に、十分な生存期間を得られず安定したモデル作成に時間を要した。そのため移植実施数が予定数より少なくなり、当初必要と計上した機材の購入や培地の購入、動物の購入数に差が生じた。安定してモデルを作成可能となったため、当初の予定を次年度で使用する予定である。
|