2022 Fiscal Year Research-status Report
新規全身麻酔薬レミマゾラムが人工心肺後の脳内神経炎症に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
22K20947
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
高橋 可南子 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50956480)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | レミマゾラム / 脳内炎症 / ミクログリア / 人工心肺 / 術後せん妄 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工心肺を用いた心臓手術では術後せん妄が死亡率や医療費の増加をもたらすことがわかっており,その発症機序として脳内炎症の関与が注目されている.レミマゾラムは,本邦で2020年より使用可能となった新しい全身麻酔薬であり覚醒が早く,循環抑制作用も少ないとされ,心臓手術における新たな麻酔薬として期待されている.しかし,人工心肺ストレスによって惹起される,脳内神経炎症に対するレミマゾラムを含む全身麻酔薬の影響は未知である.本研究では,人工心肺モデルラットを 用いて心臓手術におけるレミマゾラム使用の妥当性を,脳内神経炎症,術後せん妄への影響の観点から検証する. まず,人工心肺モデルラットで,我々の研究チームで通常行っているセボフルランでの吸入麻酔薬において,脳内炎症が惹起されるかを検討した.Wistarラット(10-14週齢,雄)をSham手術と人工心肺手術群に振り分け,人工心肺手術では全身麻酔下に右外頸静脈アプローチによる右房脱血,左大腿動脈送血により行い,Sham手術は同部位の血管処理のみ行った.人工心肺手術群では人工心肺回路による体外循環120分ののち,すぐにホルマリン固定を行い摘出した脳と,人工心肺を終了し再灌流時間を4時間とった後の脳での脳内炎症も比較することとした.現在,海馬におけるミクログリアの活性化をみるため蛍光免疫染色の標本を作製している.デジタル画像解析ソフトを用いて蛍光免疫染色で染色された活性化ミクログリアを定量評価する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工心肺モデルラットはモデル作製のための手技が難しく,我々のグループ内でも施行可能な研究員が少ない.本モデルを使用した同時に進行している研究もあり,相対的に本研究に割く時間が本年度は少なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
セボフルランで人工心肺による脳内炎症の惹起を,蛍光免疫染色による活性化ミクログリアの定量評価で確認した後は,加えて海馬におけるIL1βやTNFαなどの炎症生サイトカインをqPCRにより 評価し,TUNEL染色とCaspase3に対するWestern Blo ttingによりアポトーシスの定量評価も行う. 同様の実験を人工心肺中にプロポフォールで全身麻酔を維持した群と,レミマゾラムで維持した群で行い人工心肺の脳内炎症への影響および全身麻酔薬での比較によりレミマゾラム使用の妥当性について検討する.
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Causes of Carryover |
現時点までの人工心肺モデルラットの作成については,すでに我々の研究室で購入済みの人工心肺回路や設備を使って遂行可能であった.蛍光免疫染色の試薬も共用で購入済みのものを使用したため新規購入には至らなかった.今後,人工心肺回路が消耗した際やqPCR,TUNEL染色、WesternBlottingの必要物品の購入,プロポフォールおよびレミマゾラムは新規購入が必要である.また海外での学会発表を予定しており,旅費として経費を計上予定である.
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