2023 Fiscal Year Annual Research Report
AQP1を起点とする妊娠高血圧症候群における胎盤機能不全の理解と治療戦略の創出
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22K20957
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
室井 慎一 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 研究員 (70965714)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / アクアポリン / 和漢薬 / レニンアンジオテンシン系 / 心肥大 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
AQP1を含めたAQP類にはアポトーシスを抑制する機能がいくつかのがん細胞において報告されている.HDPモデルマウスであるPAHマウスの胎盤組織では妊娠後期にアポトーシス細胞が野生型マウスと比較して多数検出されることが報告されている.そこで,妊娠各時期の胎盤組織をサンプルとしてアポトーシス関連因子のmRNA発現を調べたところ,妊娠19日目の胎盤サンプルでアポトーシス促進因子の増加および抑制因子の減少がみられた.昨年度までの結果と併せて考えると,母獣の血圧が上昇する妊娠16日目にAQP1の発現減少および炎症性サイトカインの発現上昇が生じ,AQP1の発現減少に引き続いて組織のアポトーシスが促進されるメカニズムが存在する可能性が示唆された. PAHマウスで亢進するレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を抑制可能な和漢薬の探索として,アンジオテンシン受容体活性化に対する生薬エキスの影響を調べた.約90種の生薬エキスのうち,オウヒ,オウレン,カンゾウ,クジンおよびジンギョウエキスにアンジオテンシン受容体活性化の阻害作用がみられた.さらに,これら生薬エキスの主な成分として報告されているNaringenin, Berberine, Glycyrrhetinic acid, OxymatrineおよびSwertiamarinのアンジオテンシン受容体活性化に対する影響を調べたところ,そのどれもが阻害活性をもつことがわかった.以上の成績から,その抑制メカニズム,細胞毒性や胎児への影響などさらなる検討が必要であるが,これら化合物が妊娠高血圧症候群の新規治療薬の候補化合物になる可能性が示唆された.
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