2022 Fiscal Year Research-status Report
精子in vivoスクリーニングによる精子の尾部形成機構解明と男性避妊薬開発への挑戦
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22K20972
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野口 勇貴 京都大学, 高等研究院, 研究員 (30965562)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | Genome-wide screening / In vivo screening / sgRNA library / Spermatogenesis / Ciliogenesis |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、精子の「形態形成」や「機能」を理解するためのアプローチは、個々の遺伝子を欠損させたマウスの精子を解析するリバースジェネティクスが主流であり、ゲノムワイドなリバースジェネティクスを行うことは困難であった。申請者は、この課題の解決のため、精子の表現系(Capacitation)を標的とする「Sperm in vivo genome-wide screening法」を樹立し、精子形成(Spermatogenesis)メカニズムの網羅的解析を試みた。本アプローチにより、限られたマウス数であっても複数の遺伝子を同時に欠損させ、ゲノムワイドなリバースジェネティクスを実現した。その結果、精子の尾部形成に関与する可能性のある遺伝子を同定し、精巣シングルセルRNA-seqの再解析によって、本遺伝子は、円形精子で高発現することが確認された。また、独自に開発した機能的コネクトーム解析ツール(Network Search)を合わせることで、本遺伝子は「シリア形成」に関与する可能性があることが示唆された。同時に、本遺伝子は、レーバー先天性黒内障(Leber's congenital amaurosis(LCA))の原因遺伝子の一つであり、網膜発生時の繊毛形成に関与するとの報告がある。以上から、申請者は、本遺伝子が精子-網膜シリア発生共通制御因子(SRCF: Sperm-Retina Ciliogenesis Factor) であると仮定し、その機能解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、SRCFノックアウトマウスの作成、SRCFの機能解析を行うことを目標とした。SRCFノックアウトマウスは順調に樹立でき、現在はF2マウスを用いて交配を進めている。また、機能解析では、当初の計画通り下記の2つの側面から解析を行なった(①: cGMP産生量、②:Primary Cilium形成能)。①では、SRCFがcGMPの産生量を制御し、網膜のシリア形成に影響を及ぼすことが知られていたことから、cGMPセンサーであるGreen-cGullを用いて精巣でのSRCFの機能解析を行なった。In vitro系でのGreen-cGullのシグナル検出条件を確立したのち、shSRCFを同時に組み込んだ改変Green-cGullレンチウイルスを用いて精巣でのノックダウン実験を行なった。しかし、精巣内では期待したようなS/N比が得られず、更なる条件検討の必要性が示唆された。②では、SRCFを欠損、過剰発現させたSH-SY5Y細胞株を用いてシリア形成能を評価した。結果、Serum StarvationによってSRCFの局在がPericentrin周辺に集積し、PCM1との共染色によりその局在はPericentriolar Satelliteと部分的に一致することが確認された。しかし、シリア形成能はSRCF欠損株で増加、過剰発現株で減少する傾向が見られたものの、統計解析にて有意な差は見られなかった。加えてシリアの長さにおいても同様であった。以上より、シリア形成時、SRCFは局在を変化させ、別の重要な機能を示し、それが結果としてシリア形成能にも間接的に影響を及ぼしていると考えられた。以上から、機能解析においても当初の目的は達成し、更なる解析についても一定の方向性を示すことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を受け、次年度は樹立したノックアウトマウスを用いた詳細な解析(精巣の重さ、精子数、精子の形態、妊孕性)を行うことで、SRCFのin vivoでの機能解析を行う。さらに、細胞株を用いた分子生物学的解析においては、「シリア形成誘導時にSRCFの局在変化がなぜ引き起こされたのか?」という問いがSRCFの機能解明を進める上で重要であると考えられたことから、プロテオミクス解析を用いて、シリア形成誘導時/非誘導時においてSRCFと結合するタンパク質のアンバイアスな網羅的解析を行うことでその機能を解明することを目指したい。最終的には、上記のノックアウトマウスの解析および、プロテオミクス解析を合わせることで精子―網膜発生における共通分子機構の一片を提示したい。
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Causes of Carryover |
初年度は、主にノックアウトマウスの樹立など実験環境の準備を行い、次年度ではそれを用いた解析(トランスクリプトーム解析、免疫染色や電顕解析を含む組織学的解析)を実施する予定であったため、予算の比重を次年度に多く計上することとなった。
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Research Products
(2 results)