2023 Fiscal Year Annual Research Report
自然リンパ球ILCに着目した歯周炎重症化機構の解明
Project/Area Number |
22K20983
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
近藤 威 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40964226)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / 歯周炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,免疫疾患において,自然リンパ球 Innate lymphoid cell (ILC) が重要な役割を果たすことが報告され,注目を集めている.これまでに我々はマウスにおける歯周炎確立期にILCが出現する知見を得ている.そこで申請者は,ILCが歯周炎において重要な役割を果たし,歯周炎メカニズム解明の新たな鍵となると考えた.本研究ではILCが歯周炎進行に与える影響を明らかにすることを目的として実験を行った. フローサイトメトリーの結果,歯周炎を惹起させた野生型マウスの歯肉において, ILC3sの数が著しく上昇し, ILC3集団は骨吸収を促進するIl17aを強く発現した.また,T細胞を欠損したRag2-/-マウスおよびT細胞およびILCsを欠損したIl2rg-/-Rag2-/-を用いて歯周炎を惹起させた結果,Rag2-/-マウスと比較してIl2rg-/-Rag2-/-マウスにおいて歯槽骨の破骨細胞の数が有意に減少し,歯槽骨吸収が抑制された.このことから,マウス歯周炎モデルにおいてILC3sは破骨細胞を活性化し,歯槽骨吸収を促進する可能性が示唆された. 一方,シングルセルRNAシーケンス解析の結果,歯周炎惹起歯肉において複数の歯肉線維芽細胞集団を認め,そのうちの一つの細胞集団(AG-fibroblasts)が歯周炎の進行に伴い,他の免疫細胞遊走を促進するケモカインCxclを強く発現した.また,AG-fibroblastsが発現する多くの遺伝子がILC3sの発現遺伝子の制御に関与していたことから,歯周炎進行過程においてAG-fibroblastsが多くの潜在的な分子によってILC3sを制御する可能性が示された. 以上の結果から,口腔粘膜において特定の歯肉線維芽細胞集団 AG-fibroblasts によって活性化されたILC3sは,破骨細胞を介して歯槽骨吸収を引き起す可能性が示された.
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