2022 Fiscal Year Research-status Report
プロポフォール・ケタミンが駆動する情報伝達系とセロトニントランスポーター制御機構
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22K20993
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今村 芹佳 (本池芹佳) 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (40964630)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 静脈麻酔薬 / セロトニントランスポーター / PKC |
Outline of Annual Research Achievements |
1)プロポフォール・ケタミンが惹起するシグナル伝達機構の網羅的解析:プロポフォールおよびケタミンはPKCをはじめ、様々なリン酸化酵素を活性化し、様々なタンパク質のリン酸化と遺伝子発現を誘導すると考えられる。そこで、以下の実験を行っている。 プロポフォールおよびケタミンを処理した細胞をリン酸化プロテオミクスに供し、プロポフォールが誘導するリン酸化タンパク質を網羅的に検索した。それらのタンパク質として血管痛の原因候補としてNO合成酵素、TRPチャンネル、麻酔薬効果発揮の候補としてTREK-1などのイオンチャンネル、また抗うつ薬発揮作用に関して、SERTなどを想定している。リン酸化プロテオミクスは、研究協力者とともに施行しているところである。また、同様に処置した細胞をRNA-sequenceに供し、発現が変動する遺伝子を網羅的に解析する予定である。 2)プロポフォール・ケタミンによるSERTの機能調節機構の解析:一般的に、細胞膜に発現するSERT機能のダウンレギュレーションが、シナプス間隙でのセロトニン増加を促し、抗うつ薬作用の発揮に繋がると考えられている。そのため、プロポフォールおよびケタミンがSERTに及ぼす影響を解明するために以下の実験を行う予定である。 遺伝子導入によりSERTを一過性・安定発現させたCOS-7細胞・HEK293細胞を用いて、セロトニン取り込み活性に対する、プロポフォールおよびケタミンの影響を検討する。単位タンパク質量あたりのトリチウム・セロトニンの取り込みを測定し、セロトニン取り込み活性とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験室の整備や機材の購入に時間を要し、研究開始が遅れている状況である。 プロポフォールおよびケタミンを処理した細胞のリン酸化プロテオミクスは、施行しているところであるが、同様に処置した細胞をRNA-sequenceに供し、発現が変動する遺伝子を網羅的に解析する実験に関しては着手できていない状況である。 次年度は、リン酸化プロテオミクスの結果を踏まえて、データの解析を行い、プロポフォールおよびケタミンが惹起するシグナル伝達機構の網羅的解析を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度に実施した研究を引き続き進めるとともに、プロポフォール・ケタミンが惹起するシグナル伝達機構の網羅的解析および、プロポフォール・ケタミンによるSERTの機能調節機構の解析を推進する。 具体的には、プロポフォールおよびケタミンを処理した細胞のリン酸化プロテオミクスのデータの解析と、同様に処理した細胞のRNA-sequenceを行い、発現が変動する遺伝子の網羅的解析を行う。それらの結果から得られた分子群が、優位に多く含まれる生物学的過程・経路を統計学的に抽出し(パスウェイ解析)駆動するシグナル伝達経路を同定する。 また、遺伝子導入によりSERTを一過性・安定発現させたCOS-7細胞・HEK293細胞を用いて、セロトニン取り込み活性に対する、プロポフォールおよびケタミンの影響を検討する。単位タンパク質量あたりのトリチウム・セロトニンの取り込みを測定し、セロトニン取り込み活性とする。 以上の網羅的解析で得られたシグナル伝達系の阻害薬、関連分子のsiRNAを用いて、麻酔薬によるSERT機能調節のメカニズムをさらに検討し、網羅的解析の正当性を確認する。
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Causes of Carryover |
実験の進行がやや遅れており、研究費の使用が延長されている状況である。 次年度では、前年度の実験に引き続きリン酸化プロテオミクスやRNA-sequenceの費用の捻出、プロポフォールおよびケタミンを処置した細胞を用いて、SERTの機能調節機構の解析のための試薬や物品購入に研究費を使用する予定である。 また、実験結果を学会での発表や論文で報告する際の費用としても使用する予定である。
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