2022 Fiscal Year Research-status Report
歯周病による心疾患発症にβアドレナリン受容体シグナルは寄与するか?
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22K21003
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
松尾 一朗 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (40962907)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周病 / 心疾患 / 交感神経系 / 内毒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 歯周病は死亡原因第2位の虚血性心疾患の発症に関与していることが数多く報告されている。研究代表者は、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis由来の内毒素(PG-LPS)を持続投与する方法で作成した歯周病マウスモデルの解析より、PG-LPSの持続投与は心機能低下、心臓リモデリング(線維化、アポトーシス)促進、βアドレナリン受容体(β-AR) の下流の分子(カルモデュリンキナーゼII)のリン酸化作用があることを報告した。以上の結果をもとに、本研究では「歯周病により誘導される心筋の機能不全にβ-ARシグナルの持続的な活性化が重要である」という仮説をたてその検証を行う。 【材料・方法】 雄8週令の野生型マウス(C57BL/6)を用いて、コントロール群、PG-LPS(0.8 mg/kg/day)を7日間皮下投与を行う。PG-LPS投与群、β-AR遮断薬(Pro:プロプラノロール)投与群(1000mg/kg:給水ボトルより経口投与)、PG-LPS+Pro 併用投与群の4群を作成し、投与開始1週間後に心エコー測定、実験終了後心臓を摘出し組織学的・分子生物学的解析(ウェスタンブロッティング法)を行った。 【結果】心エコーによる左室収縮能(LVEF:左室駆出率・FS:左室内径短縮率)はControl群に比較してLPS投与群では有意に低下したが、Pro併用群では、その低下が有意に抑制されていた。マッソントリクローム染色による線維化領域の割合はControl群に比較してLPS投与群で有意に高値を示したがPro併用群では、その上昇が有意に抑制されていた。線維化タンパクα-SMAの発現量も同様の結果を示した。 【考察】PG-LPSの慢性投与による心筋リモデリングは、LPS投与に伴う心筋βアドレナリン受容体刺激で誘導される心筋細胞死と置換性線維化に起因することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯周病の主要な病原菌(Porphylomonas gingivalis:PG菌)由来のリポポリサッカライド(LPS)を中等度の歯周病患者で検出されるレベルの低濃度(0.8mg/kg/day)をマウス(57BL/6/J)に1週間投与することで心臓線維化領域の拡大、心機能の低下が見られた。またこれらの所見はβ-AR遮断薬遮断薬であるProを併用投与することで抑制された。今年度の研究成果によりPG-LPSの慢性的な刺激はβ-ARシグナルを介した心疾患発症を誘導している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、令和4年度に引き続きPg-LPS投与による歯周病モデルマウスを用い、Pg-LPSの慢性投与が心筋の線維化・アポトーシス・酸化ストレスを誘導する分子機序について解析を進める。β受容体シグナルと合わせてこれらに関連する因子の機能についても詳細に解析する予定である。また心臓自律神経機能への影響をテレメトリーシステムを用いた心電図測定にて解析を進める。得られた研究成果は、関連学会における発表と学術雑誌への論文投稿を通して発信する予定である。
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Causes of Carryover |
第64回歯科基礎医学会にて口頭発表予定であったが、台風直撃のため学会自体が中止(特例により学会発表自体は認定された。)となり払い戻しを実施した。令和5年度はHRV測定を実施予定であるが、テレメトリー心電図装置のバッテリー消耗により、交換費用の支出が確実に見込まれるため、一部費用を次年度に使用することとした。
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