2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K21012
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
眞弓 昌大 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10964851)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | タガトース / プレバイオティクス / 口腔細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、希少糖の一つであるD-タガトースによる口腔細菌叢に対しての選択的な抑制効果を確認し、その分子基盤の解明に迫ることを目的としている。 現在までの成果として、口腔細菌叢において代表的な口腔レンサ球菌群三菌種、う蝕原性菌としてのStreptococcus mutans、歯周病発症に関与すると考えられている Streptococcus gordonii、典型的な口腔常在菌と考えられている Streptococcus oralis、に対して S. mutans および S. gordonii にのみD-タガトースは選択的に抑制効果を示し、その背景にフルクトース特異的リン酸化輸送体(Fru-PTS)の基質特異性が関与している可能性を明らかにした。さらに、その分子基盤を追究するために、選択的に抑制効果が確認された二菌種においてFru-PTS 遺伝子欠失株を作製し、D-タガトース耐性の有無について検討を加えている。今後はこれら遺伝子欠失株と野生株を対象に安定同位体を用いた代謝フラックス解析を実施する予定である。また、実際の口腔細菌叢を想定した多菌種混合バイオフィルムにおけるD-タガトースによる影響の評価を計画しているが、現在は多菌種を同時培養可能な培地を検討するとともに、上記三菌種の口腔レンサ球菌群混合培養系でのD-タガトースによる影響の評価を実施している。 本研究の遂行により、D-タガトースの口腔レンサ球菌群を対象に認めた菌種選択的な抑制効果の分子基盤に迫り、口腔細菌叢を模した多菌種で構成されるバイオフィルムに対しても病原性を有する菌種に同様の選択的な阻害効果を確認できれば、口腔プレバイオティクス研究の足掛かりになり得る。今後の発展としては、D-タガトースの歯磨剤や食品への応用により、う蝕・歯周病の予防を目的とした eubiotic な口腔細菌叢の維持を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
D-タガトースによる菌種特異的な制御機構の解明に迫るため、代謝フラックス解析を行う予定だが、比較群としての遺伝子欠失株の作製を行っているが解析用サンプルの調整はまだ行えていない。また、口腔細菌叢を想定した多菌種で構成されるバイオフィルムへのD-タガトースの影響に関しては、適正な培養条件の検討を行っている。いずれも、新型コロナ感染症による急な人員不足を発端とした、診療業務等の予期せぬ増加に起因するものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.D-タガトースによる代謝変動の解析 前述口腔レンサ球菌群三菌種野生株及び二菌種遺伝子欠失株を対象にGC-MSを利用した代謝フラックス解析を行い、D-タガトースの菌体内動態及び、それに影響される菌体内代謝の変動を網羅的に解析する。 2.多菌種混合バイオフィルムへのD-タガトースの影響 培養における条件検討を終え、D-タガトース処理による菌叢のプロファイルの変化を定量PCRにより解析する。
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Causes of Carryover |
研究遂行の遅れに伴い、D-タガトースやD-グルコースの安定同位体などの高額な試薬の購入が次年度に繰り越されたため。
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