2022 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜幹細胞転換を誘導する化合物の探索およびそれを用いた新規歯周組織再生法の創出
Project/Area Number |
22K21018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長谷川 大学 九州大学, 大学病院, 助教 (20757992)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 歯根膜幹細胞 / 幹細胞転換 / 歯周組織再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、歯根膜幹細胞転換のメカニズムのキーとなる“MEST遺伝子の発現を制御する転写因子”を明らかにし、その因子を活性化させる“低分子化合物”を見出すことを目的とした。 我々はまず、歯根膜幹細胞転換を誘導する因子を解明するため、多分化能を有さないヒト歯根膜細胞株(2-52)にMEST遺伝子を導入した歯根膜幹細胞様細胞(2-52_MEST)とコントロールベクター導入細胞(2-52_empty)を用いた網羅的遺伝子解析(cDNAマイクロアレイ法)を行った。その結果、2-52_MESTにおいて、転写因子Paired-like homeodomain transcription factor 2 (Pitx2)の発現が有意に高いことがわかった。さらに、2-52_MESTにおけるPitx2発現をsiRNAによりノックダウンすることで、多分化能および幹細胞マーカー発現が抑制されることがわかった。以上のことから、Pitx2が歯根膜細胞における幹細胞転換に関与する転写因子である可能性が示唆された。 次に、歯根膜幹細胞転換を誘導する低分子化合物探索のため、Pitx2の発現を上昇させるシグナル刺激について検討した。我々は過去の予備実験の結果から、上皮間葉転換に関与するとされるTGF-beta2およびBMP4に着目し、これらのリコンビナントタンパクを添加した培地にて2-52を一定期間培養した。その結果、TGF-beta2、BMP4いずれの添加培地においても、2-52における幹細胞マーカーの発現が上昇することがわかった。現在、これらのタンパクを用いた多分化能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、大学または企業が提供している次世代化合物ライブラリーを用いて、Pitx2を標的とする低分子化合物を探索および抽出する予定であったが、コストや効率面等の問題から、文献検索による探索に切り替えた。そのため、候補の抽出に時間を要し、本年度中に予定していた多分化能解析の完遂には至らなかった。来年度に予定している動物実験に関しては、ポジティブコントロールを用いた予備実験をすでに開始しているため、多分化能解析が終了次第、本実験に移行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は本年度の研究結果から、TGF-beta2(TGFシグナル)およびBMP4(BMPシグナル)が歯根膜細胞の幹細胞転換に関与する可能性を示唆した。しかしながら、本研究の最終目標は、歯根膜幹細胞転換を誘導する低分子化合物の抽出であるため、TGF-beta2およびBMP4により誘導された歯根膜幹細胞様細胞を用いた動物実験(歯周組織再生能解析)を進めるとともに、TGFシグナルおよびBMPシグナルをアクチベートする低分子化合物の探索・抽出も同時進行で行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度に当初予定していた多分化能解析が、研究の進行の遅れから、完遂に至っておらず現在も実行中である。そのため、本解析に要する物品費が一部次年度分に回ったので、次年度使用額が生じた。
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