2022 Fiscal Year Research-status Report
Molecular pathological analysis of periodontal tissue destruction caused by dental calculus via NLRP3 inflammasome
Project/Area Number |
22K21019
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
前 めぐみ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (40967585)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | NLRP3インフラマソーム / 歯石 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージを歯石で刺激すると、炎症に関係するタンパク質NLRP3インフラマソームの活性化を介して炎症性サイトカインIL-1β、IL-18が産生され、骨代謝に関して、IL-1βは破骨細胞形成に促進的に、IL-18は抑制的に作用することが知られている。IL-1βおよびIL-18は相反する破骨細胞形成への作用を示すため、歯石で誘導されるサイトカインが歯周炎における歯槽骨吸収にどのような影響を及ぼすか明らかでない。 本研究ではラット歯周炎モデルに人工歯石を投与することで歯石によりNLRP3インフラマソームを介して産生されるIL-1βおよびIL-18が歯槽骨吸収にどのような影響を与えるか解明する。 ラット(5匹)の上顎右側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に人工歯石としてハイドロキシアパタイト(HA)結晶を3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁して1日1回滴下し、HA(+)群とした。ラット(5匹)の上顎左側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースのみを1日1回滴下し、HA(-)群とした。各群のラットの上顎をマイクロ CTで撮影し、骨吸収量を経時的に比較した。1週間後および2週間後に屠殺し、硬組織標本およびマイクロ CTで骨吸収量を形態学的に解析した。さらに、組織学的解析ではTRAP染色により破骨細胞形成を観察した。HA(+)群、HA(-)群ともに歯槽骨吸収が観察されたが、HA(-)群と比較して、HA(+)群により大きな歯槽骨吸収がみられた。また、HA(-)群と比較してHA(+)群で、より多くの破骨細胞が観察された。 これらの結果は、人工歯石として添加したハイドロキシアパタイト(HA)結晶が、歯槽骨吸収に促進的に作用したことを示していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、Lewis系ラット(5匹)の上顎右側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に人工歯石として直径5μm以下のハイドロキシアパタイト(HA)結晶を500μg/mlの濃度で3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁して1日1回滴下し、HA(+)群とした。コントロールとして、Lewis系ラット(5匹)の上顎左側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースのみを1日1回滴下し、HA(-)群とした。各群のラットの上顎をマイクロ CTで撮影し、骨吸収量を経時的に比較した。HA(+)群、HA(-)群ともに経時的に歯槽骨吸収が拡大したが、HA(-)群と比較して、HA(+)群により大きな歯槽骨吸収がみられた。実験を開始して1週間後および2週間後に屠殺し、固定・脱灰ののち上顎第二臼歯の連続切片を作製した。各群の標本から、歯周組織の炎症および破壊状態を観察するためにH.E染色を行った。HA(+)群、HA(-)群ともに、上皮の潰瘍形成や根尖側への伸展、結合組織への炎症性細胞浸潤が観察されたが、HA(-)群と比較して、HA(+)群により多くの上皮の潰瘍形成や根尖側への伸展、結合組織への炎症性細胞浸潤がみられた。1週間目よりも2週間目で、より多くの上皮の潰瘍形成や結合組織への炎症性細胞浸潤が観察された。 さらに、組織学的解析ではTRAP染色により破骨細胞形成を観察した。HA(+)群、HA(-)群ともに破骨細胞の形成が観察されたが、HA(-)群と比較して、HA(+)群により多くの破骨細胞が観察された。1週間目よりも2週間目で、より多くの破骨細胞形成を観察した。 これらのことから、人工歯石の歯周組織破壊への関与が示唆され、研究はおおむね計画通りに進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまでに実施したラット歯周炎モデルの個体数を増やして結果を検証するとともに、歯周組織破壊のメカニズムについても解析を進める。 これまでに5匹のLewis系ラットの上顎右側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に人工歯石として直径5μm以下のハイドロキシアパタイト(HA)結晶を500μg/mlの濃度で3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁したものを1日1回滴下し、HA(+)群とした。コントロールとして、5匹のLewis系ラットの上顎左側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースのみを1日1回滴下し、HA(-)群とした。各群のラットの上顎をマイクロ CTで撮影し、骨吸収量を経時的に比較した。さらに、実験を開始して1週間後および2週間後に屠殺し、固定・脱灰ののち上顎第二臼歯の連続切片を作製し、各群の標本から、上皮の潰瘍形成や根尖側への伸展の有無・結合組織への炎症性細胞浸潤をみるためにH.E染色を行った。また、組織学的解析ではTRAP染色により破骨細胞形成を観察した。これらの解析をさらに5匹のLewis系ラットを用いてHA(+)群を作製し、コントロールとして5匹のLewis系ラットを用いて、HA(-)群を作製し、同様の比較解析を行う。 さらに、HA(+)群およびHA(-)群の組織標本の免疫染色を行い、IL-1βおよびIL-18の発現を解析する。生化学的解析ではIL-1βおよびIL-18、骨代謝マーカーの遺伝子発現量を解析する。また、NLRP3インフラマソーム複合体の構成因子であるカスパーゼ1、NLRP3およびASCの遺伝子発現量も各々解析する。IL-1β、IL-18、NLRP3インフラマソーム複合体の構成因子の発現が上昇していれば、これらが歯周組織の破壊に関与していることが示唆される。
|
Causes of Carryover |
令和4年度に交付された直接経費1,100,000円の内、1,038,016円は執行済みであり、ほぼ計画通りに使用しているが、計画段階での見積額よりも実際の購入時に値上がりした物品があり、購入数を調整したために、61,984円の次年度使用が生じた。 組織染色実験に必要な試薬の購入に充てる予定。
|