2022 Fiscal Year Research-status Report
JAK2/STAT経路を介した新規口蓋裂発症メカニズムの解明と治療薬の探索
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22K21036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 尚起 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (30965273)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 口蓋裂 / JAK2/STAT経路 / MEE細胞 / AG490 |
Outline of Annual Research Achievements |
口唇口蓋裂は多くの機能不全や審美障害を伴い患者のQOLを著しく低下させる。口蓋裂は二次口蓋の癒合不全により生じ、二次口蓋の癒合には口蓋突起の先端に存在するMEE細胞が消失することが必要である。口蓋裂は多因子性の疾患であり、その原因となる因子は一部報告されているが、まだ不明なものも多く存在すると考えられており、当教室では以前から口蓋裂発症のメカニズムの解明に取り組んできた。炎症で代表的なJAK2/STAT経路は自己免疫疾患をはじめ様々な疾患の原因となっており、STAT3の機能欠失が原因で起こる原発性免疫不全症候群の高IgE症候群では随伴症状として口蓋裂が報告されている。当教室ではJAK2/STAT経路に着目し、既にJAK2/STAT経路特異的阻害剤 (AG490) を用いて、JAK2/STAT経路の異常がMEE細胞の消失を阻害することで口蓋裂を発症することを明らかにした。しかし、JAK2/STAT経路の異常がMEE細胞にどのようなメカニズムで影響を及ぼしているのかは明らかにできていない。 そこで本研究では、JAK2/STAT経路の異常によるMEE細胞の遺伝子発現の変化を網羅的に解析することでMEE細胞の消失に及ぼす影響を解析し、MEE細胞の消失を正常化できる分子標的薬を探索することによって、JAK2/STAT経路の異常により生じる口蓋裂を予防する方法を解明する。本研究を遂行する事により、MEE細胞におけるJAK2/STAT経路の役割を解明することが可能であり、JAK2/STAT経路の異常による口蓋裂に対する新規治療法の開発に挑戦できる。 本年度はJAK2/STAT経路阻害を行った口蓋組織のMEE細胞からRNA採取し、RNA-seqを用いて網羅的に解析することでJAK2/STAT経路阻害によりMEE細胞において変動する分子を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標の一つであるAG490投与の影響によるMEE細胞の遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。マウスの口蓋を取り出してからAG490を投与して48時間培養後の組織を回収し、組織切片を作成した。組織切片からレーザーマイクロダイセクションを使用してMEE細胞を回収し、RNAを採取した。採取したRNAをRNA-seqを用いて網羅的に解析し、JAK2/STAT経路阻 害によりMEE細胞において変動する分子を明らかにした。また、変動した分子の発現部位を in situ hybridizationで確認し、同分子のMEE細胞におけるRNAの発現量をq-PCRで確認した。 もう一つの研究目標である、AG490投与で生じる口蓋突起上皮の癒合不全を予防する化合物を探索することは、現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後研究目標である、AG490投与で生じる口蓋突起上皮の癒合不全を予防する化合物を探索することを進めていく。JAK2/STAT経路の阻害によるMEE細胞の消失阻害を正常化する化合物の探索はRNA-seqにより明らかになったJAK2/STAT経路阻害時のMEE細胞で起こる分子メカニズムから、JAK2/STAT経路阻害によるMEE細胞の消失阻害を正常化できる化合物を選定し、それらを口蓋突起上皮接触モデルを用いた器官培養において添加し、MEE細胞の組織学的解析を行うことで、JAK2/STAT経路阻害で生じる口蓋突起上皮の癒合不全を予防する薬剤を同定する。
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