2023 Fiscal Year Annual Research Report
抗てんかん薬の常用は全静脈麻酔での遊離型静脈麻酔薬の薬物動態に影響を及ぼすか?
Project/Area Number |
22K21039
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中納 麻衣 岡山大学, 歯学部, 博士研究員 (00967101)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 薬物相互作用 / プロポフォール / 抗てんかん薬 / 薬物動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的障害のある歯科患者に対して、行動調整を目的にしばしば麻酔管理下での歯科治療が選択されている。また、知的障害のある患者はてんかんの合併が多く、抗てんかん薬(AED)内服患者に対して麻酔管理を実施する機会が多い。本研究は、AED内服がプロポフォールの麻酔効果および薬物動態にどのように影響しているか、つまり薬物相互作用について解明することを目的に行われた。特に本研究では、AEDによって血中蛋白から遊離した遊離型プロポフォールが増加し、遊離型プロポフォール濃度が上昇する可能性があるため、遊離型プロポフォール濃度を評価した。研究は全身麻酔下で歯科治療を予定された患者を対象に行われた。対象患者をAED内服歯科患者(AED群)およびAED非内服歯科患者(対照群)に分けて、歯科処置終了後にプロポフォールを中止した時点(終了時)と気管チューブを抜管した時点(覚醒時)で静脈血を採取した。血液サンプル中のプロポフォール濃度(全濃度)および遊離型プロポフォール濃度(遊離濃度)を高速液体クロマトグラフィーで測定し、覚醒時間、Bispectral Index(BIS)値との関連を調べ、それぞれの測定値についてAED群と対照群で比較した。その結果、AED群の覚醒時間は対照群と比較して有意に長かったが、BIS値は終了時および覚醒時ともに両群間で有意差はなかった。終了時および覚醒時の全濃度はいずれも遊離濃度と有意に相関しており、覚醒時のBIS値は覚醒時の全濃度および遊離濃度と有意に相関していた。以上の結果から、遊離濃度は全濃度と連動しており、麻酔効果と相関していることがわかった。AEDの内服はプロポフォールの麻酔効果に影響を及ぼしていることは示唆されたが、両群間で遊離濃度に有意差がなかったことから、遊離型プロポフォールの薬物動態に対するAED内服の影響についてはさらに検討が必要であると考えられた。
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