2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K21061
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐々木 詩佳 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (10964140)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | PONV / ケタミン / ドーパミン / セロトニン / 延髄最後野 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】術後悪心・嘔吐(postoperative nausea and vomiting; PONV)は、最も頻度の高い術後合併症の一つである。本研究では、PONVの副作用を有する複数の全身麻酔薬をラットに投与し、嘔吐様行動と各脳部位中の神経物質の増減との関連を行動薬理学的手法及び脳マイクロダイアリシス法を用いて比較検討することで、全身麻酔薬間で異なるPONV発症メカニズムの解明、そして使用する全身麻酔薬に応じた有効かつ適切な治療薬・予防薬の探索を目的とした。 【方法】PONVの副作用を持つ静脈麻酔薬ケタミンとPONVの副作用がない静脈麻酔薬ペントバルビタールを使用した。①PONVモデルでの全身麻酔薬の作用の検討:ラットのカオリン異食行動を利用し、全身麻酔薬投与前後のカオリン摂取量を測定し比較することで、悪心・嘔吐の重症度と持続時間、用量反応性を検討した。②全身麻酔薬投与による脳内神経伝達物質の経時的変化の検討:脳マイクロダイアリシス法を用いて、悪心・嘔吐関連部位である延髄最後野中の神経伝達物質量の変化を経時的に検討した。主な神経伝達物質としてドーパミン及びセロトニンを中心に検討した。③PONV治療薬・予防薬の探索:PONVを誘発する全身麻酔薬により増加した神経伝達物質に対する受容体拮抗薬の投与や減少した物質の受容体作動薬投与により、カオリン摂取量が変化するか検討した。 【結果】ペントバルビタール投与前後でカオリン摂取量は変化せず、延髄最後野中のドーパミンとセロトニン量は減少した。ケタミン投与によりカオリン摂取量は増加した。また、ハロペリドール(ドーパミンD2受容体拮抗薬)同時投与によりカオリン摂取量は減少したが、オンダンセトロン(セロトニン5-HT3受容体拮抗薬)投与では変化しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
悪心・嘔吐関連脳部位である延髄最後野と孤束核で検討する予定であったが、延髄最後野での実験に時間がかかってしまい、孤束核での検討が行えていない。 また、産前・産後休暇及び育児休暇取得により、2022年度の研究計画に遅れが認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
①PONVの副作用を持つ静脈麻酔薬であるエトミデートを使用した検討を行う。 ②孤束核において脳マイクロダイアリシス法を用いた検討を行う。 ③PONV発症に関わる神経回路の同定を行うために、神経細胞の逆行性トレーサーを延髄最後野や孤束核に投与し、全脳にわたる蛍光色素の発現パターン解析から、脳内催吐神経回路を明らかにする。 以上で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
産前・産後休暇及び育児休暇取得により、2022年度の研究計画に遅れが生じたため。 2023年度は育児休暇中であり研究実施困難であり、2024年度に研究再開予定である。
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