2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K21063
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮部 梨紗子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (50609774)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 全身麻酔薬 / 前障 / 前頭前皮質 / 局所フィールド電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科領域においても多用される全身麻酔薬であるが、意識回復の遅延は患者の認知機能の低下やせん妄を引き起こすことが報告されている。また、様々な作用機序を持つ全身麻酔薬が臨床で用いられているが、その詳細な作用機序は不明な点が残されている。可逆的な意識の消失がどのようなメカニズムの上に成り立っているかを解明することで、全身麻酔予後の改善につながる。一方で、意識をコントロールには複数の脳領域が関与していることが明らかになりつつあるが、それらがどのように作用して意識の消失や回復が起きるのかはいまだ不明のままである。 本研究では、睡眠時の意識消失に関与する前障や、麻酔時の意識消失で神経活動が変化する前頭前皮質に着目し、それらの脳領域を含む意識消失のネットワーク解明を目指した。全身麻酔薬には異なる受容体に作用するプロポフォール、イソフルラン、デクスメデトミジンを使用し、それぞれの意識消失前後で、着目した脳領域での神経活動の変化をLFP記録を用いて解析した。その結果、アドレナリンα2受容体作動薬であるデクスメデトミジンで、前頭前皮質に先行した前障での徐波生成を確認した。他の麻酔薬ではこの現象が認められなかったことから、根本的な意識の消失メカニズムは前障よりも上流にあることが推察される。また、メスを用いた行動学的実験において麻酔薬の作用に大きなばらつきが認められたことから、性ホルモンの麻酔に対する影響が示唆された。 今後は、前障に投射してる脳領域のなかで、意識の維持に関与している場所を逆行性トレーサーなどで標識することで検索を進め、どうように神経ネットワークの同定を行っていく予定である。また、麻酔作用において性差が認められたことから、意識の維持に対する性差についても研究を計画している。
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