2023 Fiscal Year Annual Research Report
IL-1αの制御による口腔癌の悪性化進展の新規予防法の解明
Project/Area Number |
22K21072
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
福井 怜 日本大学, 歯学部, 助教 (60771095)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔癌 / Interleukin-1alpha |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌の癌微小環境において分泌されたIL-1αが、癌の増殖や浸潤・転移に果たす役割を検討するため、ヒト臨床検体を用いた病理形態学的解析に加え、分子生物学的手法を用いて検討した。まず、ヒト臨床検体を用いた免疫組織学的な検討はこれまでに報告がなかったために、IL-1αの発現パターンをnegative, low, moderate, highの4段階の基準を定め、弱陽性の癌細胞が癌組織全体中の30%以上に認められる症例をlowとし、low以上の症例を陽性例と判定した。また癌浸潤先進部において小型の癌細胞に比較的強い発現を示す傾向を認めた。次に、解析症例の約40%にあたる陽性症例において、患者の年齢、性、腫瘍の大きさ、分化度、リンパ節転移の有無などの臨床データを解析したが、L-1αの発現と有意な相関を示す項目は認めなかった。癌データベース網羅的横断解析サイト(cBioportal)を用いた、口腔癌におけるIL-1αの発現と予後との相関解析においては、IL-1αの発現が高い患者において、5年生存率が低い傾向にあることが示された。 In vitro実験では、口腔癌細胞株5種類を用いてIL-1αの発現や分泌を比較検討した。同じ口腔癌細胞株でも細胞の種類によってIL-1αの発現レベルが異なっていた。この結果を踏まえIL-1αを高発現している口腔癌細胞株を選定し、siRNAを用いてIL-1αの発現をノックダウンした系において、癌細胞はIL-1αの発現や分泌だけでなく、遊走能を顕著に抑制した。 本研究結果より、ヒト臨床検体および口腔癌細胞株において、IL-1αの発現に多様性が認められた。また癌浸潤先進部でのIL-1αの発現特異性は、細胞の遊走能を反映している可能性がある。以上より、口腔癌においては症例ごとにIL-1αの発現レベルを検討することが、予後因子として重要である可能性を見出した。
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