2022 Fiscal Year Research-status Report
アンサンブル学習及び公開データベースを用いた造血幹細胞移植予後予測モデルの開発
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22K21082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩崎 惇 京都大学, 医学研究科, 医員 (40967527)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | HLAエピトープ / 移植後シクロフォスファミド / 移植片対腫瘍効果 / ドナー選択 / 再発 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年4月26日のEBMT 49th Annual Meetingにおいて、血縁者間ハプロ半合致移植において、HLAクラスIエピトープの不一致が、特に移植後シクロフォスファミド治療を用いた場合、進行病期の血液腫瘍の再発を抑制し、予後を改善する事を報告した。近年、移植後の免疫学的合併症である移植片対宿主病において有効性が示された事から、移植後シクロフォスファミドを用いた血縁者間ハプロ半合致移植(PTCy-haplo)は最も件数が増えている造血幹細胞移植法となっている。この治療法により、兄弟であっても4分の1の確率でしかHLA型は一致しないため、血縁者のドナーは選択しづらかったが、PTCy-haploの開発により、一致しなかった症例の3分の2の症例はドナーとして選択が可能となり、造血幹細胞移植領域におけるドナーの選択肢は大幅に拡大した。一方で、免疫反応を強く抑制する治療である事から、腫瘍を抑制する能力である移植片対腫瘍効果を懸念されてきた治療法であったが、逆に腫瘍を抑える効果が維持されているという事から、本治療法を後押しする結果が得られた上に、有効性に関するメカニズムの一端を解き明かすことに成功したと考えている。本知見により、PTCy-haploを実施する際に、より適切なドナー、つまりエピトープ不一致数が多い症例を選択する事により、より腫瘍抑制効果の高いドナーを選択できるようになる事が期待される。現在、同報告に関して、論文化を進めている。また、機械学習アルゴリズムに関しては、造血幹細胞移植の予後予測において大きな課題の一つである慢性GVHDに関して、我々の開発したアンサンブル学習モデルを用いた予後予測Webツールの開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、①HLAエピトープの一致数による予後への影響を明らかにする事、②機械学習を用いた包括的な生存時間解析により、更に個々のHLAエピトープの意義や他の予後因子と関連したHLAエピトープ一致数の意義等を検討する、という2段階の過程において、より深いHLAエピトープと移植後免疫反応の関係性を明らかにし、造血幹細胞移植における適切なドナー選択に生かしていく事を最終的な目標としている。①のHLAエピトープの意義に関しては、我々が既に報告した非血縁者間における意義に加えて血縁者間移植における意義も明らかになってきている。非血縁者間移植と血縁者間ハプロ半合致移植においては、HLAアレル不一致数の違いやハプロタイプ一致の違いがあり、両者を理解する事から、真に移植後免疫反応に影響するエピトープを同定する事が可能となる。初年度に①の目標が概ね達成されたと判断しており、現時点の計画としては、順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度までの研究で、HLAエピトープの造血幹細胞移植における重要性を明らかにする事ができた事から、次年度としては、更に我々が開発したアンサンブル学習を用いた機械学習アルゴリズムを用いて、更に深いHLAエピトープと移植後免疫反応の関係性を理解する事が今後の目標となる。具体的には、個々のエピトープによっても免疫学的反応に与える影響は異なる事が予想され、また、移植前処置やGVHD予防法など、他の移植後免疫反応に影響の大きい予後因子との関係性も重要である事から、②において機械学習を用いた生存時間解析を応用する事により、個々のHLAエピトープやHLAエピトープ不一致数を含めて包括的に移植後予後との関係を検討することで、更に深い解釈が可能と考えている。
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Causes of Carryover |
機械学習アルゴリズムの開発・維持及びWebアプリケーションの開発やサーバーとしては、Google Cloud Platform(GCP)を使用しており、GCP使用量が主な用途となる。同様に、開発やデータ解析に用いるワークステーションやソフトウェアも必要となる。また、本年度も国内・国外を含めた学会での報告を予定しており、学会参加に関わる諸経費も必要となる。
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