2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト剖検試料を用いたNO関連タンパク質解析による虚血性心疾患死後診断の研究
Project/Area Number |
22K21083
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山崎 元太郎 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (60964096)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | NO関連タンパク質 / 虚血性心疾患 / iNOS / NOS2 / ヒト剖検試料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、冠動脈硬化の有無の違いによる、心臓組織中の一酸化窒素(NO)関連タンパク質の比較を行い、現状では除外的診断に頼らざるを得ない超急性虚血性心疾患の積極的死後診断に有用な死後心臓タンパク質の同定・分析を進めることを目的に行った。 心臓試料を用いて、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の4つの一酸化窒素(NO)関連タンパク質に対する免疫染色を行い、更なる分析を進めるNO関連タンパク質を選定した前年度に引き続き、最終年度では、前年度で採取した心臓試料を用いて冠動脈および心筋のホモジネートを作成し、それらの総タンパク定量および、sGC、iNOS、eNOSの3つのNO関連タンパク質についてELISA定量を行った。定量した各NO関連タンパク質濃度を総タンパク濃度で除して得られた比を用いて、冠動脈硬化のある群とない群の2群で統計的に分析したところ、心筋ホモジネートにおいて、冠動脈硬化のある群はない群と比べ、有意(p=0.0491)にiNOS/総タンパク質の比が高いことが明らかとなった。 iNOSは炎症によってマクロファージなどが誘導するNO合成酵素である。心臓においては血管拡張を始めとする冠動脈硬化の発生にも関わっているタンパク質であり、それを反映して、本研究においても冠動脈硬化のある群で高値であった可能性がある。 本研究においては、冠動脈の有無におけるiNOS/総タンパク質の比の違いのみ調査を行ったが、今回の結果を基にして、今後の研究では更に多くの症例を対象とし、iNOS発現と死因の関係、冠状動脈硬化症の程度によるiNOS発現の違い、およびiNOS発現細胞の動態といったiNOSに焦点の絞った研究を進めていく予定である。
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