2023 Fiscal Year Research-status Report
魚類のサルモネラ汚染状況調査ならびに遺伝学的手法を用いた汚染原因の探索
Project/Area Number |
22K21162
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
落合 崇浩 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究職員 (00945082)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | サルモネラ / 魚類 / ウナギ / 食品微生物 / 食品衛生 / 食中毒 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はサルモネラの魚類に対する付着機構や汚染原因の解明を目的とする。2023年度も魚類からのサルモネラ分離試験を行った。天然魚68個体(16魚種)、養殖魚67個体(8魚種)、計135個体の内臓を検査対象とした。養殖ニホンウナギから2種類の血清型Saintpaul、Litchfieldのサルモネラが分離され、保有率は30%(6/20検体)であった。その他の養殖魚および天然魚からサルモネラが分離されなかった。 分離株18株および保管株21株の全ゲノム配列をMiSeqで解読した。血清型内訳はSaintpaulが28株、Litchfieldが9株、OUT:l,v:1,2が1株、Infantisが1株であった。解読した配列および公開ゲノム配列を用いたin silico MLST解析やSNVs解析を実施した。 MLST解析の結果、ニホンウナギから得られた血清型Litchfieldは全てST214、Saintpaulは全てST27と判明した。SNVs解析により、346株のST214は2つのクラスターに大別された。魚類由来株が属するクラスターと哺乳類や鳥類由来株が含まれるクラスターであった。ニホンウナギ由来株が海外の魚類由来株と同一のクラスターに属することから、この系統は魚類と親和性の高い株である可能性がある。481株のST27に対するSNVs解析では、ニホンウナギ由来株がアメリカの家禽株とは遠縁であること、ベトナムの魚類由来株が比較的近縁であることがわかった。 今回、ニホンウナギ由来ST214およびST27が複数系統分離された。このことは、養殖池の違いを反映していると同時に、養殖段階の魚に特定系統のサルモネラが付着する可能性を示唆している。また、ニホンウナギ由来株と比較的近縁な患者株も存在することから、サルモネラが魚類と調理環境を介してヒトに到達する感染経路の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度および2023年度に養殖ニホンウナギから分離したサルモネラおよび所属機関保有株に対し全ゲノム解析を実施した。2023年度末、データ数を増やし解析精度を高める目的で、他機関から解析対象となる血清型のサルモネラを約60株入手した。2024年度にこの株の全ゲノム配列を解読する必要があるため、進捗状況がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
未調査地域における魚類とその生育環境からのサルモネラ分離試験を継続する。さらに、協力機関から分与された血清型Saintpaul およびLitchfieldの全ゲノム配列を解読する。 これまでのゲノム解析の結果、魚類に親和性の高いクラスターの存在が示唆されたため、当該クラスターに特異的な遺伝子探索を目的としたパンゲノム解析を実施する。
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Causes of Carryover |
ゲノム解析の精度向上の目的で分離株を追加する必要があるため、研究期間を延長した。サルモネラの至適増殖温度の観点から、気温や水温の低い冬季より夏季の分離効率が上がると想定されるため、前年度の冬季に使用予定の助成金を次年度夏季の使用額とした。 次年度使用額は、2024年度に検体採取に係る旅費、検体購入費等に充てる予定である。
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