2022 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of predictive accuracies of functional outcomes of stroke patients by machine learning models
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22K21225
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
宮崎 裕大 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 身体リハビリテーション部, 医師 (70966192)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 予後予測 / 脳卒中 / 機械学習 / リハビリテーション / 深層学習 / deep learning / machine learning |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,機械学習により脳卒中患者の機能的予後予測精度の改善の検討および予後予測因子の同定を目的とする.脳卒中患者の退院時の機能的予後予測は,患者とその家族に退院後の生活を考える上での重要な情報となる.そのため,入院早期からの予後予測が重要だと考えられている.そこで,重回帰分析を用いた予後予測の研究が報告されてきた.しかし,重回帰分析は線形データを仮定しており,非線形データである臨床データを用いると,予測精度が低下する可能性があった.そこで近年,非線形データを扱える機械学習が注目されている.一方で,機械学習には,学習に用いる症例数が少ないと,汎化性能が低下する過学習が起きることが知られている.近年,脳卒中患者の機能的予後予測に機械学習を用いた研究が報告されてきているが,症例数が少なく,過学習の可能性が否定できない報告も多い.そこで,本研究では過学習を起こさないために,十分な症例数を用いて,重回帰分析と機械学習アルゴリズムの予後予測精度を比較する. 本研究では,機能的予後予測の指標として,ADLの代表的な評価法であるFunctional Independence Measure(FIM)を採用した.これまでに,脳卒中後リハビリテーション治療目的に回復期病棟へ入院した脳卒中患者のうち,1046名分の入院時および退院時のFIMのデータを収集した.このデータを従来より用いられる重回帰分析に加えて,機械学習として,回帰木,アンサンブル学習,ニューラルネットワーク,サポートベクター回帰,ガウス過程回帰で予後予測を行った.本研究から,重回帰分析よりも機械学習の予後予測精度が高くなる可能性,そして機械学習の中でもガウス過程回帰が最も予測精度が高い可能性が示唆された.この結果をまとめ,論文投稿を行い,令和4年度末時点で査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,年齢などの患者背景および入院時FIM点数を説明変数に,退院時FIM点数を目的変数として,重回帰分析,回帰木,アンサンブル学習,ニューラルネットワーク,サポートベクター回帰,ガウス過程回帰で予後予測モデルを構築した.その結果,ガウス過程回帰が最も予後予測精度が高かった.これは,ガウス過程回帰が重回帰分析と異なり,非線形データを扱えること,またノイズが混入することを前提として予測モデルが構築されていることに起因すると考えられた.この結果は論文投稿中である. またFIMに加え,麻痺の評価指標であるStroke Impairments Assessment Scale(SIAS)や握力,血液データ,980例分を集積した.このデータを用いて,まずは機械学習よりも寄与率などの理解が容易な重回帰分析により予後予測モデルを構築し,各因子の予測モデルへの寄与率を検討している.一般的に機械学習は予測モデルがブラックボックス化してしまうことが知られている.そこについても今後検討していく. さらに,頭部CTおよび頭部MRIによる脳卒中患者の予後予測を行う準備をしている.まず画像データを放射線技師の協力を得て,集積を開始した.また,画像データによる予後予測モデルを学習するためには,深層学習が必要である.深層学習は数値データの解析よりも処理能力の高いコンピュータが必要となるため,令和4年度にハードウェアを購入した.今後は,深層学習用のソフトウェアのセットアップなどを行う予定である.このコンピュータを用いて,機械学習の最適化の計算も行うことを検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度中に基本的な入院時FIMによる予後予測精度の改善を検討した.令和5年度の方針としては,大きく3つある. 1つ目は,麻痺の重症度を追加した際の予後予測精度の改善やその因子の検討である.令和4年度は,機械学習の予後予測精度を純粋に比較するために,説明変数を絞り,年齢などの患者背景とFIMのみで予測モデルの構築を行った.今後は,麻痺の重症度などの臨床所見を追加することで,機械学習の予後予測精度が改善するかを検討する.また説明因子の最適化を行ない,予測精度が改善するかを検討する. 2つ目は,トイレ動作の自立の是非である.FIMの中には退院先に大きく影響を与える因子がある.その代表例はトイレ動作である.そこで退院時のトイレ動作の自立の是非を,回帰モデルではなく,分類モデルを用いて予測するモデルを作成する. 3つ目は,画像所見の検討である.これまでの先行研究のほとんどが,麻痺の重症度やFIMを用いたADL障害の重症度を説明変数として採用している.また,一部の研究は頭部CTや頭部MRIの梗塞部位や出血部位をスコア化して説明変数として採用しているが,画像所見を直接説明変数とした報告はない.近年,計算機の処理能力の向上により,機械学習の中でも計算量が多い深層学習がサーバーでなくても解析可能となった.そこで,深層学習により,頭部CTデータをスコア化せずに深層学習を用いて解析し,機能的予後予測が可能かを検討する.
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Causes of Carryover |
機械学習の計算機を作成する際に,費用を抑えるために部品毎に購入を行い,自作し費用を抑えた.次年度,論文校正費などに当てることを検討する.
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