2022 Fiscal Year Research-status Report
レーザネットワークに基づく自律的競合回避メカニズムの創成と協調的意思決定への応用
Project/Area Number |
22K21269
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
巳鼻 孝朋 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (30963277)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | レーザネットワーク / 光アクセラレータ / 同期現象 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
情報通信技術の爆発的発展とムーアの法則の終焉に見られる従来技術の限界のなかで,コンピュータと協調しながらコンピューティングの課題を解く光アクセラレータの研究が活発化している.光アクセラレータの中で,光を用いた多腕バンディット問題に対する意思決定が提案されている.多腕バンディット問題は,プレーヤが複数台のスロットマシンから報酬を最大化する問題である.さらに,複雑な設定である競合バンディット問題では複数人のプレーヤが多腕バンディット問題を解決する.ただし,数人のプレーヤが同じスロットマシンを選択した場合にはそれらのプレーヤの報酬は山分けとなる.また,競合バンディット問題は無線チャネルへの割り当てやペアリングのBeyond 5Gにおける通信の問題から帰着されるため,重要性が高まっている. 本研究では,このような競合を回避する光システムとして,半導体レーザネットワークにおける2つの同期現象に着目する.1つは,一方のレーザが他方のレーザに遅れて同期する遅延カオス同期である.この同期現象下では先行振動するレーザが自発的にスイッチングし,レーザパラメータにより先行する時間を制御できることが知られている.もう1つの同期現象として,ゼロ遅延同期に注目する.半導体レーザネットワークの構成により,半導体レーザは部分的に遅延時間ゼロで同期する.この2種類の同期(遅延同期とゼロ遅延同期)を組み合わせることで,競合を回避する新たな光システムの構築が可能であると考える. そこで本研究では,半導体レーザネットワークを用いた競合を回避する協力的光システムの創成と意思決定への応用を目的とする.より具体的には,まず,競合回避を行うスケーラブルな半導体レーザネットワークの構築を行う.そして,この半導体レーザネットワークを用いた競合バンディット問題に対する意思決定を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画にはスケーラブルなレーザネットワークの構築と競合バンディット問題の解決という大きな課題を示したが,競合バンディット問題のうち,プレーヤ数とスロットマシン台数が同じという条件下において,数値計算と実験ともに構築と競合バンディット問題の解決まで達成された.数値計算では2プレーヤ2台の場合において相互結合で4つの半導体レーザをリング状に結合することで競合なしの意思決定ができることが示された.より多くのプレーヤ数・台数の場合においても競合回避がなされることがわかっている.一方で実験においては数値計算で達成されたレーザネットワークではダイナミクスが不安定になりやすいことがわかった.しかしながら,別のネットワークにおいダイナミクスが安定して観測可能となり同様な2つの同期現象を用いた意思決定が達成できることが分かった.これらのことから,2つの同期現象が共存するレーザネットワークはあるフルコネクトなネットワークとパスが切断されたネットワークの両方で確認できることが分かった.さらに数値計算においては応用物理学会秋季学術講演会にて,実験においては応用物理学会春季学術講演会にて発表を行っている.現在,これら2つの発表をまとめて学術論文に投稿を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,現在行っているプレーヤ数とスロットマシン台数が同じ場合における数値計算及び実験を国際学会で発表し,学術論文として投稿する予定である. また,新たなバンディット問題への適応としてプレーヤ数とスロットマシン台数が異なる場合における意思決定に向けて調査を進める.まず,レーザネットワークにおいて競合を回避しつつ結合強度を変化により先行振動する時間を制御する手法の検討が数値計算と実験共に必要である. さらに当初の予定には無かったが,2つの同期現象を有するレーザネットワークの一般化が推進できると考えている.フルコネクトなネットワークとパスが切断されたネットワークの両方で確認できたことにより,今後の課題として同期状態が変わらないパスの切断方法が挙げられる.この課題が解決されることで一般化の議論のみで論文化できる.
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Causes of Carryover |
物品費については今年度購入する予定の品目を次年度に見送った.今年度は大型レーザネットワークに対応するため,数値計算用コンピュータの購入を検討している. 旅費に関して,今年度は聴講した国際学会がオンライン会議に変更されたため,旅費が発生しなかった.次年度は国際学会に現地参加する予定である.計画ではオンライン参加の予定であったが,現地参加に変更するためこの部分の金額は十分に必要である. その他の費用は今年度,論文の出版が無かったために次年度使用額が生じた.次年度では複数の論文発表が見込まれるため,費用が十分に必要と見ている.
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