2022 Fiscal Year Research-status Report
不確実性を持つネットワーク上の信号処理:グラフ信号処理とベイズ的アプローチの融合
Project/Area Number |
22K21287
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山田 宏樹 東京理科大学, 工学部電気工学科, 助教 (70965524)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | グラフ信号処理 / 電力システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は不確実性をもつネットワーク上の信号処理の問題である,グラフフィルタ転移と時間的に変動するグラフ上の信号復元問題に取り組んだ.研究成果の概要を以下にまとめる. 1. 確率密度比に基づくグラフフィルタ転移: グラフ信号の復元問題はグラフ信号処理の重要な課題の一つである.この問題の主流な手法の一つにグラフウィーナーフィルタがある.これは学習データを利用しグラフフィルタを設計しグラフ信号復元を行うものである.しかし,この手法では学習データのグラフ構造からグラフが変化した場合に対応できないという問題がある.そこでグラフ構造の変化に対応したグラフフィルタ転移手法を提案した.提案手法はグラフが変化した状況であっても,高精度にグラフ信号を復元可能なフィルタを設計することに成功した.この研究を第37回信号処理シンポジウムで発表し,信号処理若手奨励賞を受賞した.現在,ジャーナルへの投稿の準備中である. 2. グラフ深層展開に基づく時変グラフ信号の復元:時間変化するグラフ,いわゆる時変グラフ上の信号復元手法を提案した.提案手法では,時間領域,および空間領域において信号が滑らかに変化するという先見情報を利用した最適化問題を定式化した.さらに深層学習と最適化アルゴリズムを組み合わせた技術である深層展開を用い,最適化アルゴリズムの解釈性の高さを維持したまま,精度よく時変グラフ上の信号を復元することに成功した.本研究成果は信号処理分野のトップカンファレンスであるICASSP2023に採択が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究では,研究計画で予定していた不確実性をもつグラフ上の信号処理のための基礎理論構築に取り組んだ.グラフの不確実性へ対応するための手法として,グラフフィルタ転移問題を定式化し,グラフの変化への対応可能な手法を開発することに成功した.また,グラフが時間変化する場合における信号復元に対する効率的なアルゴリズムの開発に成功した.以上の成果を上げることができたため,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究では,過去データにおけるグラフから構造が変化した場合に対処するためのグラフフィルタ転移手法を提案した.令和5年度の研究では,グラフフィルタ転移手法を電力システムの状態推定問題への応用を進める予定である.また,グラフを無限次元へと拡張したグラフォンと呼ばれる数学的枠組みを利用し新たな信号処理基盤の研究を進め,不確実性をもつグラフ上の信号のフィルタリング,サンプリング,ノイズ除去手法の開発を目指す.
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Causes of Carryover |
発表が決定していた国際学会に,大学のコロナウィルス関連の規定により現地にて参加できず予定していた旅費との差額が生じた.次年度では,国際学会へ現地にて参加可能であるため,今年度発表を見送っていた研究内容を国際学会で発表することを予定しており,その旅費に今年度未使用分の金額を充てる.
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