2022 Fiscal Year Research-status Report
Vertial to real photon coversion in superconducting circuit
Project/Area Number |
22K21294
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
朝永 顕成 国立研究開発法人理化学研究所, 量子コンピュータ研究センター, 特別研究員 (50966520)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 超伝導量子回路 / 量子光学 / 量子ビット / 量子コンピュータ / 超伝導 / 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず最初に、シャントキャパシターを搭載した磁束量子ビットと共振器の超強結合回路の理論的検討を行い、理論論文で使用されている理想的なハミルトニアンの形に近いエネルギー構造を持つことを明らかにした。一方で近い形は得られたものの、理想的なハミルトニアンとの差異が存在することも確かめられた。こうした実際に作製可能な回路を想定して仮想光子の放出過程がどのような挙動を示すかを量子シミュレーションをおこなって確かめる必要があるが、これについては現在理論を検討中である。 これをもとに回路パラメータを選出し、実際に回路の設計に10月頃から取り組み、その後作成、測定を年度末にかけて行った。回路の測定では、スペクトルを確認したが、理論的に予測されるものとは異なった形を示した。また、2つのマイクロ波を導入することにより広い周波数範囲で量子ビット系のエネルギー構造を探った。その結果、量子ビットと共振器との結合系から出ると思われるスペクトルを得たが、一方で事前に数値計算により予測していたものと大きく異なるデータであった。 今後はこのスペクトルデータが、回路作成の段階で生じた設計とのずれから来るのか、今までの理論では検討していなかった効果があったのかなどを詳しく調べて、再度回路を設計、測定する予定である。 またこれは付随的な成果であるが、2つの磁束量子ビットを1つの共振器に超強結合させた系をテスト測定していたところ、2つの量子ビットのエネルギーの和が共振器の光子のエネルギーと等しくなる時に、1光子が2原子を同時励起する現象が確認された。これは超強結合系を理解する上で非常に重要な効果であると共に、2量子ビットの超強結合系を非常に高精度で記述する方法も発見した。現在この成果については論文を執筆中であり、2023年5月頃には投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、シャントキャパシターを入れた3準位人工原子と共振器の結合系に対して理論を検討し、論文を執筆する予定であったがこれに関しては予期していなかった困難があり、もう少し詳細な理論検討が必要であることから予定より若干遅れていると言わざるを得ない。一方で論文としては理論と実験を分けずに出版した方がよりインパクトの高い研究として認知されることは確かである。また当初の計画通り、実際に設計した回路の作成、評価を行っている。 また本提案とは異なる実験ではあるが、超強結合系のテストサンプルにおいて、世界で初めて2量子ビット系のスペクトルを確認し、これを記述するモデルの構築もできたことから論文を執筆しており大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、今後はまず最初に、昨年度末に測定した実験結果がどのような理論によって記述されるものなのか、実際に作製された回路がどの程度設計に一致しているのかを詳細に検討することから始める。そして、回路の設計をもう一度見直し、作成と測定を繰り返すことで、仮想光子の実空間への取り出し実験を行う。 またシャントキャパシターを搭載した系をより詳細に記述し、どのような挙動を示すのかという理論計算を行う。 そして、実験系を高精度で再現する理論を構築し、最終的には年度内に論文としてまとめて投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度から産業技術総合研究所への移動が決まったため、年度末に物品を購入することを控え残りの金額を繰り越すことにしたため。
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