2022 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛の非線形特性を再現する自己適応的な小型・低消費電力サウンドプロセッサの開発
Project/Area Number |
22K21310
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
武田 健太郎 香川大学, 創造工学部, 助教 (10964174)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 人工内耳 / 非線形回路 / FPGA |
Outline of Annual Research Achievements |
人工内耳は聴覚系に障がいを抱える人々の聴覚を補助する人工感覚器の一つである。ヒトの聴覚系は強い非線形性を呈することが知られているが、現行の人工内耳は線形システムに基づいており、十分な性能を有しているとは言えない。そこで本研究では、聴覚系の非線形特性を再現する人工内耳のための自己適応的な小型・低消費電力サウンドプロセッサの設計と実装及び実機実験を行う。本研究は、既存手法との比較を通して提案人工内耳モデルが消費電力や回路実装の観点で優れていることを示すことを目的とし、より効率の良い人工内耳回路の開発へ向けた基礎研究と位置づけられる。 2022年度では、主にエルゴード的セルオートマトンで実装される内耳モデルが呈する結合音現象に関する研究に取り組んだ。結合音現象とは異なる周波数成分を有する二音を聴取すると、それらの周波数成分の和の音や差の音を知覚する非線形現象のことである。当該年度では、(1)内耳で起こることが知られている結合音現象についての知見の収集、(2)結合音現象を呈するエルゴード的セルオートマトン内耳モデルの設計と数値シミュレーション、(3)設計されたモデルの解析やパラメータ推定、(4)設計されたモデルの回路実装と回路実験、(5)回路実装されたモデルと従来モデルとの比較、を実施することができた。さらに、これらの結果を基に二音抑制現象を呈する内耳モデルの設計の検討を開始することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、結合音現象を呈するエルゴード的セルオートマトン内耳モデルを提案し、提案内耳モデルが従来の内耳モデルに比べて高効率にハードウェア実装できることを示すことができた。また、これらの成果を国際会議及び国内研究会で発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、2022年度の研究結果から得られた知見を基に、エルゴード的セルオートマトンで実装される内耳モデルが呈する二音抑制現象に関する研究に取り組む。二音抑制現象とは、異なる周波数成分を有する二音を聴取すると、片方の周波数成分の音に対する聴取レベルが抑制される非線形現象のことである。この現象を再現することが出来る内耳モデルの設計に取り組み、従来の内耳モデルとの比較を行う。その後得られた結果をまとめ、学会発表または学術論文誌へ投稿する。また可能であれば、エルゴード的セルオートマトン内耳モデルを結合することによって大規模な内耳モデルへの拡張を検討する。
|
Causes of Carryover |
採択通知・交付内定が9月に発表される研究種目であり、初年度に研究費を使用できる期間が短かったため。 翌年度は、当該年度に支出できなかった旅費を含め、研究費を使用していく予定である。
|