2022 Fiscal Year Research-status Report
電子構造論に基づく貴金属回収に有効な抽出剤スクリーニングモデルの構築
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22K21334
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
土田 裕介 米子工業高等専門学校, 総合工学科, 助教 (00966517)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 溶媒抽出 / 貴金属 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本国内におけるレアメタル資源は乏しく、輸入に依存せずに循環型社会を構築することが重要な課題である。本研究は、この課題に取り組むため、貴金族元素を対象とした溶媒抽出試薬の設計において、抽出平衡定数を事前に予測するモデルの構築を最終的な目的としている。当該年度は、金属と配位子の間の分子間相互作用が抽出平衡定数をある程度説明できることが示唆される結果を基に、計算上、相互作用エネルギーが大きくなることが予測された分子の合成を行った。 一方、報告者は既に、ホスホニウムカチオンにニトリル基を置換基として導入することで対アニオンとのイオン間相互作用が向上することを示したが、具体的な化合物の合成は行っていなかった。そこで、当該年度にはニトリル基導入型イオン液体の合成を行い、その物理化学特性と抽出特性を評価した。 結果として得られたニトリル基導入型イオン液体は比較的高い粘度を示し、イオン間相互作用が強いという計算結果の矛盾しない物性を示した。また、実際の合成物を抽出剤として適用し、溶媒抽出を行ったところ、金を良好に抽出し、白金についてもある程度の抽出特性を示すことが分かった。また、対応する化合物として、エーテル基を導入したイオン液体と、白金を対象として抽出特性を比較すると、ニトリル基を導入したイオン液体は、白金をより良好に抽出するようであった。これは、エーテル基を導入したホスホニウムカチオンよりも、ニトリル基を導入したホスホニウムカチオンの方が、水溶液中の白金とより安定な会合体を形成しているためだと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、種々の配位子について抽出特性を解析しデータセットを収集する予定であったが、本学のICP-AESが故障し、修復が困難であったため、まずは仮説に基づき、計算上、比較的抽出特性が高いと予想されるイオン液体の合成を先に行った。次年度に実施する予定の研究内容を先に実施している一方で、本来の予定で行うべき内容の実施に至っていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定であった、データセットの収集については、原子吸光光度計を代用する形で収集することにした。したがって、予算計画についても変更が生じた。今後は、原子吸光法から、特に金、白金、パラジウムを中心にslope解析を実施する予定である。また、分子モデリングについても継続的に収集し、slope解析から得られたみかけの抽出平衡定数を基に、抽出平衡定数を決定づける変数の探索を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、計算用のワークステーションを2台計上していたが、直接経費の交付額の兼ね合いで、購入代数を1台に変更した。そのため、実質的に使用した額が少なくなっている。次年度に、データ整理用のPCに計上する予定である。
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