2022 Fiscal Year Research-status Report
ポリカプロラクトンネットワークの海洋生分解における架橋密度の影響の調査
Project/Area Number |
22K21339
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
菅根 海人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部機能化学材料技術部マテリアル技術グループ, 研究員 (80965864)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 生分解性ポリマー / 海洋生分解 / 架橋高分子 / 架橋密度 / ポリカプロラクトン / ポリウレタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではポリマーの海洋生分解における架橋密度の影響を調査することを目的として研究を行った。本年度は架橋密度の異なるポリカプロラクトンネットワークの作製を行った。開始剤としてペンタエリスリトールを用いたε-カプロラクトンの開環重合により星型ポリカプロラクトンオリゴマーの腕の長さが異なる3種類のオリゴマーを合成した。この3種類のオリゴマーについてNMR測定を行い、目的の構造が得られていることを確認した。続いて合成した3種類のオリゴマーをそれぞれヘキサメチレンジイソシアネートとのウレタン化反応によって架橋し、架橋密度の異なる3種類のポリマーネットワークのフィルムを作製した。作製したフィルムについてFT-IR測定を行い、すべてのフィルムにおいてウレタン化反応が進行しポリウレタンが形成されていることを確認した。作製したフィルムについてアセトンに浸漬する膨潤試験を行ったところ、オリゴマーの重合度が増加するとともに膨潤度が増加し、実際に架橋密度が低下していることが確認できた。本年度は架橋密度の異なるポリカプロラクトンネットワークの作製に成功した。本年度の成果は星型ポリカプロラクトンオリゴマーの重合度を変えることで最終的に得られるポリマーネットワークの架橋密度を制御することができたという点で重要である。今後は本年度作製に成功した架橋密度の異なる3種類のポリカプロラクトンネットワークのフィルムについてより詳細な構造解析と熱・力学物性および海洋生分解性について調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は架橋密度の異なるポリカプロラクトンネットワークの作製を行った。開始剤として4官能のペンタエリスリトール、6官能のジペンタエリスリトール、8官能のトリペンタエリスリトールを用いてε-カプロラクトンの開環重合を行い、腕の数が4, 6, 8本となる星型ポリカプロラクトンオリゴマーを合成した。続いて合成した3種類のオリゴマーをそれぞれヘキサメチレンジイソシアネートとのウレタン化反応によって架橋し3種類のポリマーネットワークの作製を行った。これらのポリマーネットワークについてアセトンに浸漬する膨潤試験を行ったところ、膨潤度に明確な差がみられなかったことから架橋密度に大きな違いがないことがわかった。そこで当初の計画から合成方法を変更し、開始剤であるペンタエリスリトールとモノマーであるε-カプロラクトンの仕込みモル比を変えることで、星型ポリカプロラクトンオリゴマーの腕1本当たりの重合度が5, 10, 15となるように設定した3種類のオリゴマーを合成した。その後同様にウレタン化反応によって架橋しポリカプロラクトンネットワークを作製したところ、オリゴマーの重合度が5, 10, 15の順に膨潤度が増加し架橋密度が低下していることが確認できた。以上より、本年度は架橋密度の異なるポリカプロラクトンネットワークの作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作製に成功した架橋密度の異なる3種類のポリカプロラクトンネットワークのフィルムについてより詳細な構造解析と熱・力学物性および海洋生分解性について調査する予定である。まず、動的粘弾性測定を用いて架橋密度を詳細に調査する。続いてDSC、TGAを用いた熱物性の調査、引張試験による力学物性の調査を行う予定である。さらにBOD法を用いた海洋生分解性試験を行い、架橋密度の違いによる海洋生分解性の違いを調査する。
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Causes of Carryover |
研究計画に従い支出を行った結果生じた残額である。次年度分の助成金と合わせて引き続きサンプル作製、分析・試験に関する使用を計画している。
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