2023 Fiscal Year Research-status Report
Unified catalysis concepts from molecular design to sustainable chemicals and materials
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22K21348
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 高史 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20222226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳶巣 守 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (60403143)
本田 孝祐 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (90403162)
松崎 典弥 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (00419467)
近藤 美欧 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20619168) [Withdrawn]
徐 于懿 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10757678)
正岡 重行 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20404048)
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Project Period (FY) |
2022-12-20 – 2029-03-31
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Keywords | 触媒 / 酵素 / 持続可能物質変換 / 化学エネルギー源 / バイオエコノミー |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な社会における物質変換には触媒は欠くことのできないツールである。これまでの触媒開発は、化学および生物工学のそれぞれの分野で独自に高いレベルで発展を遂げているが、学問的に共通点が多い。したがって両分野の協働は、さらなる革新的な触媒設計開発と、その触媒を用いた有用な生体適合性物質の生産や化学物質の分解研究に大きなインパクトを与えるものと期待される。このコンセプトを基に、本国際先導研究では、主にRWTHアーヘン工科大学の生物工学や計算科学を専門とするメンバーと、大阪大学の触媒化学を専門とするメンバーが国際共同研究を通じて、持続可能な社会に貢献する触媒開発に着手している。これまでの実績としては、令和5年度に両者の間に多くの国際共同研究が開始され、複数の国際共著論文を既にまとめている。例えば、生成物の立体選択性の向上を主眼においたアルカンの水酸化をつかさどる人工金属酵素の計算科学に基づく設計手法の提案とその実践や、酸化カルシウム・ヒドロキシアパタイトとカタラーゼを組み合わせた寿命の長い酸素徐放材料の開発を国際共同研究の成果として報告した。 一方、RWTHアーヘン工科大学と大阪大学の両メンバーが一堂に会したジョイントシンポジウムを令和5年度3月に大阪大学で開催し、お互いの研究成果発表を通じて、さらなる共同研究の模索と計画策定を行った。人材交流については、博士課程の学生や若手教員を、RWTHアーヘン工科大学やビュルツブルグ大学、ビーレフェルト大学に派遣し、人材育成とともに有機的な共同研究を実施した。また博士研究員も複数大阪大学で雇用し、令和6年度の春から順次RWTHアーヘン工科大学に派遣し、長期滞在しながら、現地で共同研究を推進することも決まっている。また、若手教員と学生が主体となるオンラインシンポジウムを12月に開催し、若手世代での交流も始まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本国際先導研究では、学際的な国際共同研究を通じて化学とバイオの融合を基盤とした触媒・酵素の学術的概念を深め、さらには新しい触媒を用いた生体・医療材料の開発や物質変換、化学エネルギー源の獲得、データサイエンスを用いた新しい触媒設計をめざし、バイオエコノミーなプロセス化学への寄与も目的としている。本目標に沿った現在までの主な進捗状況としては、バイオインスパイアード金属錯体を触媒として用いたポリ乳酸の合成と分解の実施と反応中間体の評価、超好熱細菌に着目して遺伝子工学手法を駆使した効率的芳香族化合物生産、情報科学を駆使したパラジウム触媒による有機合成反応のジアステレオ選択性向上予測ツールの開発、触媒活性を有する機能性マイクロゲルの開発と細胞足場材料への応用、生体適合性高分子複合体の合成と形状記憶マルチブロックコポリマーステントの創製と新しい生体医療材料への展開、小分子変換をつかさどる金属錯体と金属酵素の反応機構解析と実践的なハイブリッド生体触媒開発等の国際共同研究が、RWTHアーヘン工科大学と大阪大学のメンバーで始まっている。これらの共同研究を推進するにあたり、令和5年度は、計5名の博士後期課程の学生をRWTHアーヘン工科大学等のドイツに派遣し、3ヶ月程度実験を行っている。また、研究分担者や若手の研究協力者も計4名がそれぞれRWTHアーヘン工科大学に立ち寄り、国際共同研究の打ち合わせを行った。さらに、若手の人材育成の一環として、オンラインでのジョイントシンポジウムを実施し、両大学から計20名程度が参加して両大学の若手の研究発表と研究討議を行い交流を深めた。また、令和5年度の3月には大阪大学でジョイントシンポジウムを開催し、双方の研究の進捗を理解とともに今後の共同研究計画について対面でのディスカッションを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、実質的には国際共同研究のスタートの期間であり、色々な研究計画の模索を行ったが、令和6年度はその計画を実施に移す時期である。令和6年度には、大阪大学で雇用する数名の博士研究員をRWTHアーヘン工科大学に長期派遣し、国際共同研究を弾力的に実施する予定である。また、博士後期課程の学生も、数名を3ヶ月から半年程度、RWTHアーヘン工科大学やビーレフェルト大学等に派遣し、国際感覚を有する若手人材育成に精力的に努めたい。さらには、研究代表者・分担者の研究室に所属する若手スタッフ(助教等)を1週間から2週間程度RWTHアーヘン工科大学に派遣し、先方での共同研究の研究討議とともに、セミナーや多くの教員や学生とのディスカッションの機会を与える予定である。 一方、令和5年度末のジョイントシンポジウムを通じて、これまで想定していたRWTHアーヘン工科大学のメンバーと大阪大学のメンバー同士の1:1の共同研究から、複数のメンバーが一緒に協働する共同研究スタイルへの変化の兆しも見えてきた。たとえば、生物工学の研究者と錯体化学の研究者と計算科学の研究者の3者で共同研究のチームを形成し、学際的な触媒開発を是非検討してみたい。もうひとつは、持続可能な社会における物質変換を意識し、生分解性の高分子合成や小分子活性化を介した有用物質の合成、新しい人工光合成系の創製にも焦点をあてる。大阪大学側の触媒化学とRWTHアーヘン工科大学側の生物工学の学問分野の融合を図りつつ、新規な触媒設計を応用研究への展開を模索したい。
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Causes of Carryover |
令和5年度に採用予定であった博士研究員の雇用のキャンセルが2件あり、また現在雇用している博士研究員も令和5年度の途中からの採用となり、人件費の余剰が生じた。また、旅費の方でも、RWTHアーヘン工科大学に派遣予定の博士後期課程の学生の辞退があり、予定の執行ができなかった。したがって、令和6年度には、積極的に博士研究員の採用活動や博士後期課程の学生の派遣を行い、円滑に予算執行を進めたい。
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