2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KF0001
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50271531)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NGUYEN THANH 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 含硫黄分子 / 星間塵表面反応 / 化学進化 / 星間分子雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,星や惑星誕生の場である星間分子雲に存在する固体微粒子,氷星間塵上での硫黄を含む分子の化学反応を実験的に検証し,宇宙における硫黄の化学進化をより詳細に理解することである。研究対象として,これまでに星間分子雲で観測されている硫黄を含む化学種,硫化カルボニル(OCS),メチルメルカプタン(CH3SH),二酸化硫黄(SO2)を選択した。超高真空(10-8Pa程度)チャンバー内で作製し,10ケルビン(K)に冷却されたアモルファス氷上にそれらの分子を蒸着し,水素原子との反応を検証した。反応はフーリエ変換型赤外吸収分光高度計でその場観測され,さらに氷から脱離する成分は四重極型質量分析計で分析された。 いずれの分子も水素原子との反応には活性化エネルギー障壁が存在するため,通常10K程度の極低温では熱的に反応しえないが,量子トンネル効果による水素原子付加反応が進行した。OCSからはチオギ酸(HCOSH),SO2からはスルフィン酸(HSOOH)など,これまでの天文観測ではなじみのなかった硫黄を含む分子が生成し,CH3SHを含むいずれの分子も水素原子との反応で最終的に硫化水素(H2S)を生成した。硫化水素は水素原子との反応で容易にガス化するため,これらの硫黄を含む分子はいずれも氷星間塵上には固体として残りにくい化学種だと考えられる。これは,これまでの天文観測結果と極めて調和的である。 上記の研究成果の大半は既に学術論文として公表され(Nguyen et al. 2021, 2023; The Astrophysical Journal),現時点でもう1報の論文投稿の準備がほぼ整っている。さらに,関連する化学反応を対象とした量子化学計算論文に実験データを提供し,実験と理論の両面で星間化学の発展に大きく貢献した。
|
Research Products
(9 results)