2022 Fiscal Year Annual Research Report
Fire physics of spreading flame over multi-layer flammable material in microgravity
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22F21343
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 修 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10183930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG QIANG 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-07-27 – 2024-03-31
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Keywords | 複合材料 / 着火 / 燃え拡がり / 燃焼物理 / 微小重力 / 火災安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験で使用される複合材料として実際の回路基板で使用されフェノール樹脂と銅箔を結合させたもの、解析の容易さを考慮してPMMAと銅箔を貼り合わせたもの、そして、電線の被覆材の三種類を選定した。また、PMMAに関しては比較実験として銅箔のないものについて実験を行った。フェノール樹脂とPMMAについては燃え拡がり現象の観察、電線に関しては短絡が生じた場合の着火現象を対象として研究を行った。 燃え拡がり実験に関しては、実験手法を確立する必要があることから、その基礎データとなる試料燃え拡がり現象に及ぼす周囲への熱損失の影響について検討を行った。短冊状に切り出した幅5mm~40mm、長さ150mm程度の試料の上端に着火を行い、火炎が下方に伝播する際、左右に冷却壁を設置しその影響を調べた。この結果、火炎の燃え拡がり速度は試料と冷却壁の距離の関数となり、火炎形状もその距離によって規則的に変化することが示された。さらにこの結果について理論的検討を行い、試料左右側面の火炎構造に及ぼす壁面熱損失の影響が重要な役割を果たしていることを指摘した。また、燃え拡がり現象に対する火炎の伝播方向(上方伝播、下方伝播等)の影響を議論するための基礎となるガス燃料拡散火炎に及ぼす重力影響についても別途研究を進めている。こちらの成果についてはすでに2件の論文投稿に繋がっており、そのうち1件は採択ずみとなっている。 着火実験に関しては、2023年度に微小重力実験を実施予定であり、本年度はその準備研究を行い、実験の概念検討、必要資材の調達、予備実験データの取得などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に推移しており、多くの研究成果が得られている。固体材料の火炎燃え拡がり研究については、2件の論文投稿がなされており、そのうち1件はすでに採択ずみとなっていることは、当初の計画以上の進展と言える。なかでも試料左右に設置する冷却壁の影響を明らかにできたことは、平板試料の二次元燃え拡がりを実現することに繋がり、複合材料の燃焼研究の更なる進展に大きく寄与するものである。 着火実験に関しては2023年度中の微小重力実験に向けて必要な準備研究が順調に進んでおり、次年度に装置の詳細設計および組み立て、データ取得を予定通り実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
複合材料の燃え広がり実験については、2022度に確立した実験手法を活用し、試料の厚さおよび幅の影響、冷却壁の熱容量の影響、周囲流速影響、酸素濃度影響など、実験の変数を増やし、系統的なデータ取得を行う。さらに、複合材料上を燃え拡がる火炎に現れる非定常燃え拡がり現象についても実験的観察を行う。その上で、それぞれの実験データに対応した理論検討を行い、複合材料の燃え拡がり速度、消炎限界、非定常現象を説明しうる理論モデルの構築を行う。 複合材料の微小重力場における着火実験については、2022年度に概念検討および構成部品の調達を行っており、これを基に装置の詳細設計、装置の組み立て、地上予備試験を実施する。微小重力実験は2023年後半を想定しており、北海道赤平市にある50m級落下塔を使用する。実験における観察対象は、過電流を与えた電線の着火現象に及ぼす燃焼室空間サイズの影響である。これは、電気配線が閉じた空間に配置されることが多く、その空間のサイズが電線回りの熱分解ガスの流動現象に影響をおよぼし、着火現象が変化する可能性があるためである。これらの実験データを取得したうえで、現象の物理的理解、支配方程式の記述、および数値解析を行い、着火遅れ時間や最小着火エネルギーなどの予測を試みる。 これらの研究で得られた成果は、国内外の学会・学術誌(日本燃焼学会、マイクログラビティ応用学会、燃焼・火災系国際ジャーナル)で積極的に公表していく予定である。
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Research Products
(2 results)