2022 Fiscal Year Annual Research Report
バイオメカニクスで紐解くバイオフィルム形成の仕組み
Project/Area Number |
21F50064
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 拓司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20313728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YANG JINYOU 東北大学, 医工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸菌 / バイオフィルム / 数値シミュレーション / 数理モデル / 可視化計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオフィルムは、バクテリアなどの微生物が集積した構造体である。健康問題や環境問題、工業技術と密接に関わっているが、その形成メカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、まず始めに、生体内などの複雑環境下におけるバクテリア挙動を実験的に可視化計測する。次に、その現象を数理モデル化し、実験を再現する数値シミュレーションを行う。最後に、これらの結果を統合し、バイオフィルム形成過程を生物物理学的に解明する。 本年度は、ゼブラフィッシュの実験系を完成させ、腸内における細菌挙動のライブイメージングに成功した。前腸と中腸、後腸の細菌挙動を詳細に計測し、その解析を行った。結果として、細菌が腸壁の窪みに集積する傾向がみられた。この現象は腸内のバイオフィルムの初期過程と考えられ、重要な発見である。観察された傾向の頻度を定量化するため、今後はさらに実験ケースを積み上げて検証していく予定である。 また、本年度は、大腸菌の挙動を解析できるシミュレーションコードの開発も行った。せん断流れ中の鞭毛挙動を詳細に調べたところ、せん断速度が閾値を越えると、鞭毛が束化できなくなる現象を発見した。鞭毛が束化している場合には、大腸菌は壁近傍で一方向に安定的に遊泳できた。一方、鞭毛が束化できなくなると大腸菌は遊泳できなくなり、壁から徐々に遠ざかる傾向が見られた。これらの現象はこれまでに報告されておらず、本研究で新規に発見された現象である。今後はパラメトリックスタディを行い、大腸菌の挙動の体系化を行い、現象の発生メカニズムの解明にも挑む。 以上の研究成果を公表する準備にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ゼブラフィッシュの実験系を完成させ、腸内における細菌挙動のライブイメージングに成功した。細菌の集積傾向が観察されるなど、実験系で新規の研究成果が得られている。また、大腸菌の挙動を解析できるシミュレーションコードの開発にも成功した。せん断速度が閾値を越えると鞭毛が束化できなくなる現象を発見しており、計算系でも新規の研究成果が得られている。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細菌が腸壁の窪みに集積する傾向を定量化するため、さらに実験ケースを積み上げて検証していく予定である。また、せん断速度が閾値を越えると鞭毛が束化できなくなる現象を掘り下げ、パラメトリックスタディを行うことで大腸菌挙動の体系化を行う。さらに、現象の発生メカニズムの解明にも挑む。 本年度は最終年度であるため、研究成果を査読付き学術論文として公表する。
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