2022 Fiscal Year Annual Research Report
ペロブスカイト及び遷移金属ダイカルコゲナイドの超高速光物性に関する研究
Project/Area Number |
22F32733
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
矢花 一浩 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70192789)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MATTA SRI KASI 筑波大学, 計算科学研究センター, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2022-09-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 第一原理計算 / 非線形光応答 / 2次元物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ペロブスカイトや遷移金属ダイカルコゲナイドなどの物質群に対し、高次高調波発生を始めとする超高速・非線形光応答に対して第一原理計算を遂行し、その特徴を明らかにすることを目的とする。本年度はまず、遷移金属ダイカルコゲナイドなどの2次元単原子層物質に高強度パルス光が照射した際に起こる非線形光応答を記述する理論と計算法の基礎に関する確認を行なった。計算には、代表者のグループで開発を進めている時間依存密度汎関数理論に基づく第一原理計算コードSALMONを用いた。特に、パルス光が斜方入射し電場が原子層に垂直な成分を持ち面に垂直な分極の成分が生じる場合に、これをスラブ近似で扱うことの妥当性を調べた。その結果、最も単純な原子層物質であるグラフェンに対し電場を垂直方向に印加した計算を行うと、電場による電子励起エネルギーが、本来依存すべきではないスラブの厚さに大きく依存することを明らかにした。これは、スラブ近似においてスカラーポテンシャルが周期的であると仮定したことに原因があると考えられ、現在境界条件を改善する検討を進めている。また、2次元物質の示す非線形光応答として、2層からなる原子層物質が回転により歪みを持つモアレ構造がもたらす非線形光応答に関心が持たれている。そのような光応答を明らかにすることを目的として、まずモアレ構造の基底状態構築を行なった。今後、原子層に垂直に直線偏光や楕円偏光を持つパルス光が入射する場合に、高次高調波発生などの非線形光応答の特徴を調べることを計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を中心的に推進している外国人特別研究員は、第一原理計算に基づく材料科学に関し豊富な経験と実績を有するが、物質の光応答、特に実時間第一原理計算に基づく非線形光応答に関する知識と経験が不十分であったことから、その理論と計算法の基礎を理解するのに時間を要しており、当初の予定よりも進捗がやや遅れている。外国人特別研究員の採用期間は、残り半年弱であることを考え、当初予定した研究から対象を絞ることが必要と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初、ペロブスカイト及び遷移金属ダイカルコゲナイドの超高速光物性に関する研究を推進する予定であったが、上述のように進捗にやや遅れがあり、また本外国人特別研究員の1年間の採用期間のうち残りは半年弱であることから、2次元原子層物質である遷移金属ダイカルコゲナイドの非線形光応答、及び理論と計算法の開発と確認のために、より単純な原子層物質であるグラフェンを用いた研究に絞り進めることを考えている。特に、電場成分が原子層と垂直な成分を有する斜方入射の場合に起こる非線形光応答に関し、新しい理論と計算法を構築する見込みが得られていることから、この方向に最も力を注ぐ。またモアレ構造をもつ2次元物質の非線形光応答は、実験研究の発展が期待できるタイムリーな研究方向であることから、並行して研究を進める予定である。
|