2022 Fiscal Year Annual Research Report
水素社会の実現に向けたメチルシクロヘキサンからの触媒的脱水素反応の開発
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22F22109
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金井 求 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20243264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JAGTAP RAHUL 東京大学, 薬学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-07-27 – 2024-03-31
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Keywords | 触媒 / 脱水素反応 / アルカン / 水素社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素社会の実現には、水素の貯蔵・輸送といったインフラの整備が重要であり、有機ハイドライドが水素キャリアとして注目されている。中でもメチルシクロヘキサンは水素貯蔵量や利便性から有望な水素キャリアであり、大規模スケールでの実証実験が行われている。水素キャリアに対する水素付加反応は工業的にも確立されている一方、その逆反応である水素放出プロセスは比較的未開拓な分野である。本反応が難しい理由として、水素放出を伴う結合の不飽和化は一般的に熱力学的に不利な過程であるという点、有機化合物の不活性なC-H結合を活性化する必要がある点が挙げられる。そのため既存の方法では貴金属触媒を用い、高温条件で水素を系外に放出しながら反応を行う方法が主流である。そこで今回、有機水素キャリアであるメチルシクロヘキサンから温和な条件かつ貴金属フリーで脱水素反応を進行させる触媒系を確立することを目指す。 本年度は、有機水素キャリアであるメチルシクロヘキサンから温和な条件かつ貴金属フリーで脱水素反応を進行させる触媒系を確立することを目指して研究をおこなった。特に、ラジカル分子触媒(第一の触媒)によるC-H結合引抜きと遷移金属触媒(第二の触媒)による脱水素過程を組み合わせた系を検討した。またこれらを電子的にカップルする第三の触媒として光触媒を利用した。その結果、中程度の収率で目的の反応を進行させる条件を見出すに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果により、従来20%以下だった収率を、中程度以上まで引き上げることができ、研究の方針が間違っていないことを認識できた。また、コバルト触媒の配位子を広範に検討し、触媒の構造的多様性を拡張することができた。これらの新規触媒は、脱水素反応にとどまらず、他の重要化学反応への応用が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる触媒条件の検討を継続し、目的反応の収率の向上を図る。そのために今後は、水素引き抜き触媒条件の検討を主におこなう。また、メチルシクロヘキサンだけでなく、他のアルカンや炭化水素基質への適用の検討を開始する。
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