2023 Fiscal Year Annual Research Report
非極性氷中の弱い相互作用:星間大型有機分子の新たな生成経路
Project/Area Number |
22KF0103
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相川 祐理 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40324909)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MOLPECERES DE DI GERMAN 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | アストロケミストリー / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間氷で最も存在度が高い分子はH2Oである.しかし分子雲コアや原始惑星系円盤のような比較的高密度かつ低温な領域では氷表面にCOが多く存在すると考えられる.CO氷表面での化学反応効率はH2O氷とは異なると予想されるが,その相互作用の弱さ故にモデル化が難しく研究例が限られている. そこで本研究では,まずCO氷モデル作成を行った.DFT計算において複数の関数を用いたベンチマークテストを行い,非結晶および結晶状態のCO氷におけるCO吸着エネルギーを求めた.その結果ωB97M-Vが計算に適した関数であること,吸着エネルギーは200-1600 Kと幅広い値をとることがわかった. 次に,COクラスタおよびH2Oクラスタ表面において有機分子生成の材料となるラジカルの吸着エネルギーを計算し,CO氷とH2O氷表面での吸着エネルギーの比を求めた.この結果を分子雲コアにおける気相-固相の化学反応ネットワークモデルに取り入れることで,氷表面組成によって有機分子生成効率がどのように変化するかと調べた.すなわち,ネットワークモデルにおいて氷表面のCO被覆度に応じてラジカル等の吸着エネルギーや拡散率を変えたモデルと,従来のようにこれらの値を変化させないモデルを計算し比較した.その結果,CO氷の存在によって有機分子の存在度が増加することを示した. また,星間氷表面でのCO+OH --> CO2 + Hの反応について量子化学計算を行った.この反応は従来,H2O氷表面を用いた室内実験の結果から効率よく起こると考えられてきたが,CO氷表面では反応経路上のバリアを超えるためにエネルギーを与える必要があることが分かった.またH2O氷表面でも従来考えられていなかった素反応が関与していることが分かった. さらに,H2O氷やNH3氷表面でのC原子の拡散速度および化学反応についても研究を行った.
|