2022 Fiscal Year Annual Research Report
磁性トポロジカル物質におけるアクシオン量子輸送現象の研究
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22F22326
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 穣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (10464207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YAN JIAN 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-11-16 – 2025-03-31
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Keywords | トポロジカル物質 / ホール効果 / 低温実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は反強磁性トポロジカル物質EuIn2As2の電気抵抗とホール抵抗の磁場依存性の詳細を測定した。この物質ではEu原子のスピンがEu層内で強磁性的に整列し、Eu層間では反強磁性的に整列することで、アクシオン絶縁体をはじめとする興味深い電子状態が実現することが提案されている。我々は、この物質の低温強磁場中での電気輸送特性を詳細に測定することで、ホール伝導率にスピン構造由来のトポロジカルホール効果の成分が含まれていることを明らかにし、そのトポロジカルホール伝導率の磁場依存性を明らかにした。その磁場依存性をもとに、中性子実験などから提案されているゼロ磁場における磁気構造をもとに磁場中の磁気構造を推定し、その磁気構造とトポロジカルホール効果の関係について考察し、Euのスピンがなす立体角の大きさがトポロジカルホール効果の大きさと関係している可能性を指摘した。この結果について、磁場方向依存性を測定することで、両者の関係を支持する結果を得ることもできた。以上の内容について論文執筆を行い、Physical Review Research誌において論文発表した。 さらに、磁場中の磁気構造を直接明らかにするためにEuIn2As2の核磁気共鳴(NMR)測定を行いEuとIn、As核におけるNMR信号の検出に成功した。さらに、Euスピンのつくる内部磁場を利用したゼロ磁場中でのNQR測定を行うことで、Euスピンがつくる内部磁場の大きさとその温度依存性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EuIn2As2の磁気抵抗やホール伝導率の磁場依存性について詳細な測定を行うことができ、その結果を解析して論文発表まで行うことができた。さらに、磁気構造の磁場依存性についての考察を確認するためのNMR測定のとりかかることもでき、必要な各原子核におけるNMR信号の確認もできた。
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Strategy for Future Research Activity |
EuIn2As2のNMR信号について、その磁場依存性を磁場方向を変えて測定することで、Euスピンの磁気構造が磁場に対してどのように変化しているか明らかにする。これを中性子実験から提案されている磁気構造と比較することで、この物質の磁気構造とその電気伝導特性の関係を明らかにする。 さらに、EuサイトやInサイトにおける元素置換試料の作成を試みて、電気伝導特性の変化を測定する。特に、電子ドープすることでフェルミ面を調整することが可能かどうか明らかにする。
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