2021 Fiscal Year Annual Research Report
廃棄汚泥由来バイオ炭の多機能性を活用した高度嫌気性消化技術の開発
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21F21340
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (30598503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU JIBAO 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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Keywords | 嫌気性消化 / メタンガス / 廃棄活性汚泥 / バイオ炭 / 菌叢解析 / ネットワーク解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
嫌気性消化処理は、有機性廃棄物をエネルギー(メタンガス)等に変換することが可能であり、持続可能な社会へ向けて重要な技術となる。本研究では、従来の嫌気性消化処理にバイオ炭添加や促進酸化処理技術を組み合わせることで、廃棄汚泥からのバイオガス生産効率向上や新興汚染物質の除去などを可能とする高度嫌気性消化技術を開発する。研究初年度では、原料として廃棄活性汚泥を活用し、熱分解ならびに鉄の添加処理により鉄含有バイオ炭の合成を行った。鉄含有バイオ炭存在下での過硫酸塩による酸化処理では、活性汚泥フロックを効率的に破砕することができ、バイオガス生成における中間物質(酢酸などの揮発性脂肪酸)の生産量を向上させることができた。例えば、鉄含有バイオ炭存在下では、揮発性脂肪酸の生成量が1.5倍増加することが確認できた。しかし、過硫酸塩による酸化処理で残留した過硫酸塩が、後段の微生物処理における阻害機能を示し、残留性過硫酸塩の除去や逓減が今後に検討すべき重要な課題となった。また、使用した、鉄含有バイオ炭の物性分析(表面特性や細孔分析等)も電子顕微鏡法や窒素吸着法により実施した。さらに、嫌気性消化に関わる微生物の菌叢解析において重要となるネットワーク解析を実施した。ネットワーク解析は、微生物間相互作用やキーストーン種を検出するために有用と考えられるが、既存の相関関係ベースのネットワーク解析では、微生物間相互作用の非線形性を十分に考慮できていない懸念があった。そこで本研究では、PCA-PMIなど非線形的な共起関係に基づきネットワーク解析を実施可能なワークフローを構築した。その結果、これまでの線形解析では検出できなかった、嫌気性消化に重要なメタン菌などを重要種として検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3つのサブテーマである「1.バイオ炭合成と過硫酸塩酸化による汚泥前処理」、「2.バイオ炭を活用した嫌気性消化」、「3.嫌気性消化系における菌叢解析」から構成される。今年度の研究では、サブテーマ1については、バイオ炭を用いて過硫酸塩酸化による汚泥前処理を実施した。また、サブテーマ2についても、バイオ炭を添加した嫌気性消化において、揮発性脂肪酸の生成量増加を確認することができた。サブテーマ3に関連して、ネットワーク理論を活用した菌叢解析のワークフローを構築した。従って、本研究は計画通りおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、本研究は3つのサブテーマから構成される。今後の研究推進方策として、サブテーマ1では、引き続き鉄含有バイオ炭の合成ならびに物性分析を継続するとともに、過硫酸塩存在下での促進酸化法による廃棄汚泥の可溶化において残留する過硫酸塩の除去について検討を行う。例えば、硫化鉄としての共沈や硫化水素への還元除去などを検討事項と考えている。サブテーマ2では、バイオ炭を添加した嫌気性消化における揮発性脂肪酸やメタンの生成のみならず、排水に潜在的に含まれる難分解性新興汚染物(イブプロフェン、ビスフェノールA、ジクロフェナク等)の除去などにも着目してシステム最適化を行う。その際、溶存有機炭素濃度や分光法によるバルク有機物量の定量のみならず、超高精度質量分析を活用した溶存有機物の分子組成や新興汚染物の変換生成物の同定など、近年申請者らの研究グループで開発した超高精度質量分析による先端的有機分子解析を実施する。また、新興汚染物の分解性能においては、活性酸素種の反応特性や妨害物質との相互作用などの反応機構をラジカルスカベンジャー実験や反応速度論的解析を組み合わせることで評価する。嫌気性消化の効率化を図るためには、主要微生物群の動態や機能、また微生物のエネルギー源や代謝物質となる溶存有機物組成との関連性を明らかにすることが重要となる。前年度までに構築した共起ネットワーク解析のワークフローを基礎として、機械学習などを組み合わせることで微生物群集と溶存有機物組成の関係性を明らかにする。
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