2022 Fiscal Year Annual Research Report
繊維性微小環境形成による消化器がん転移促進機構の研究
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22F22406
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大島 正伸 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40324610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOK SAU YEE 金沢大学, がん進展制御研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-11-16 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸がん / 微小環境 / 転移 / オルガノイド / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんによる死亡原因の多くは転移再発であり、新規治療法開発のためにも転移機構の解明は重要である。受け入れ研究室では、これまでに遺伝子改変マウスやオルガノイド移植モデルを用いて消化器がん転移モデルを開発しており、それを用いた転移機構の研究を推進している。本研究では、胃がんや大腸がんなどの消化器がんマウスモデルから樹立したオルガノイドを使って、マウス脾臓への移植により、がん転移過程を再現したマウスモデルシステムを樹立し、それを用いた解析により、転移巣に形成される線維性微小環境の形成機構や、微小環境が誘導する転移巣形成機構を明らかにする。この研究により、線維性微小環境の制御による転移がん治療戦略の概念の樹立を示す。
これまでに、受け入れ研究室では大腸がんの悪性化に関与する4種類のドライバー遺伝子Apc (A)、Kras (K)、Tgfbr2 (T)、Trp53 (P)にさまざまな組み合わせで変異を導入した、マウス腸管腫瘍由来オルガノイドを樹立した。それらを脾臓移植すると肝臓に到達したオルガノイド由来細胞は、遺伝子変異の組み合わせによって異なる病変を形成することを移植実験により確認した。すなわち、APやATなどの2重変異オルガノイドは、類洞に到達した直後は塞栓を形成して滞留するが、1週間以内に消失する。一方で、4重変異のAKTPオルガノイドは、類洞に到達して数日以内に線維芽細胞様の細胞の増殖が始まり、1週間程度で線維性微小環境を形成し、微小転移巣を形成した。さらに肝転移巣から線維芽細胞株を新たに樹立し、imCAF細胞として、各種遺伝子型オルガノイドとの3次元共培養システムの樹立に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸がんのドライバー遺伝子Apc (A)、Kras (K)、Tgfbr2 (T)、Trp53 (P)にさまざまな組み合わせで変異を導入したオルガノイドを用いて、遺伝子変異と転移性について、過去の研究成果について実験的に確認した。その結果、AP、ATなどの2重変異オルガノイドは、脾臓移植後に肝臓に到達しても転移巣を形成しないこと、4重変異のAKTP細胞は、肝臓の類洞に到達後、線維性微小環境を形成し、転移巣を形成することを確認した。さらに、がん細胞と線維芽細胞との相互作用をin vitroで解析する目的で、AKTP細胞をp53遺伝子欠損マウスに移植して形成させた肝転移巣から、p53欠損により不死化した線維芽細胞株を樹立し、imCAF細胞とした。また、腸管腫瘍由来オルガノイドには、VenusまたはtdTomatoによる蛍光タンパク標識を施した。本研究では、imCAFと各種遺伝子型の蛍光標識オルガノイドの3次元共培養により相互作用の解析を実施する。これまでに、imCAFをspheroid状に培養した後で、細胞塊をオルガノイドと混ぜ合わせた培養系を独自に樹立し、タイムラプス解析システムの樹立を目指した実験を実施するなど、当初の計画に沿って研究が進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立した蛍光タンパク標識オルガノイドと、imCAFとの3次元共培養系を用いてタイムラプス解析を実施し、腫瘍細胞の遺伝子変異型に依存した、imCAFの増殖や活性化、またimCAFとの共培養に依存した腫瘍細胞の増殖性や上皮間葉転換(EMT)などの形態変化への影響を明らかにする。また、imCAFの活性化を誘導するために、上記実験の培養系に、WntリガンドやTGF-βなどのサイトカインを添加して実験も実施して影響を観察する。
これまでの本研究室での研究により、AKTPオルガノイドによる肝転移巣形成には、宿主側の自然免疫反応が重要である予備的な結果を得ている。そこで、imCAFにおいて、CRISPR/Cs9法により自然免疫受容体遺伝子を欠損させた系統を樹立させ、各種遺伝子型のオルガノイドの共培養実験を実施し、腫瘍細胞とimCAFの相互作用における自然免疫反応の役割について、解析する。
上記の共培養系は、個体内での微小環境における転移巣形成を再現したモデルとして有用である。そこで、この培養システムを用いて腫瘍細胞の増殖阻害活性を示す程分子化合物のスクリーニングを実施し、候補化合物の取得を目指す。将来的には得られた阻害役による腫瘍細胞と間質細胞の相互作用への影響を明らかにする。
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Research Products
(2 results)