2021 Fiscal Year Annual Research Report
超低振動表面増強ラマン散乱を利用した半導体表面における高感度な分子認識
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21F21361
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
池田 勝佳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50321899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAO HAOMING 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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Keywords | コアシェル型ナノ粒子 / ガス検出 / 表面増強ラマン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気相中のガス分子または液相中のイオンの酸化物表面に対する特異吸着(弱い相互作用)や表面反応(強い相互作用)を利用し、高感度な表面増強ラマン散乱分光測定と組み合わせることで、環境中の有害な微量化学種の選択的高感度検出を行う技術の確立を目指している。近年のラマン測定装置は小型化が進んでおり、ポータブルな装置による環境有害物質の高感度検出や簡易定量測定の実現へとつながる可能性が期待される。また、一方でラマン測定における低振動数領域の測定技術にも長足の進歩が見られており、特に弱い相互作用に伴う低エネルギー振動モードの直接観察が可能になることで、様々な表面物理化学現象の分子論的理解を進める上で不可欠な知見を得ることも期待される。 本研究において技術的な核となるのは、金属コア酸化物シェル構造を有するナノ粒子である。すなわち金属コアが表面増強効果を担い、酸化物シェルが微量化学種との選択的な相互作用の場を提供する。これまでに、直径100nm程度の金ナノ粒子にCuO、TiO2、CeO2、SnO2、ZnO等の各種酸化物シェルを数nm厚さで作成する条件を確立した。得られたナノ粒子における表面増強ラマン散乱効果の確認も兼ねて、既に測定系が構築されている液相系での実験を優先的に行い、液中の硫化物イオンの検出について、CuOからCuSへの置換反応を使った選択的検出の実証を行った。これと並行して、気相系での有害微量ガス検出実験に必要となる密閉セル、ガスサンプリングシステム、ガス廃棄システム等の構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において技術的な核となる金属コア酸化物シェル構造を有するナノ粒子について、様々な酸化物シェルのライブラリをあらかじめ準備する必要がある。また、高い信号増強度を得るにはシェル厚を薄くする必要があり、相互作用の場を確保するには比表面積や厚さを稼ぐ方が良いため、そのバランスを取るために作成条件を最適化する必要がある。また、酸化物シェル自身からのラマン信号は弱い方が好ましいため、アモルファス化する検討も必要である。現在までにこれらの諸条件を考慮しながら、直径100nm程度の金ナノ粒子にCuO、TiO2、CeO2、SnO2、ZnO等の各種酸化物シェルを数nm厚さで作成する条件を確立した。得られた試料については、SEMによる形状観察、EDSマッピング、TEMによるシェル厚とアモルファス化の確認等を行い、所望のコアシェル型ナノ粒子が作成できたことを確認した。 得られたナノ粒子を用いた表面増強ラマン散乱測定について、予備的な検討も兼ねて、既に測定系が構築されている液相系での実験を優先的に行った。液中の硫化物イオンを検出対象とし、CuOからCuSへの置換反応を使った選択的検出の実証を行い、酸化物シェルの硫化反応に伴うCuS振動の増加から低濃度の硫化物イオンの検出と定量が行えること、測定基板の加熱再生による再利用が可能であることを確認した。また、高濃度時には内部の金コアも硫化物化してスペクトルが変化することを見出し、幅広いダイナミックレンジを有するセンサーとしての可能性を検討した。これと並行して、気相系での有害微量ガス検出実験に必要となる密閉セル、ガスサンプリングシステム、ガス廃棄システム等の構築を行い、今後の研究の準備を進めた。 以上のように、研究計画に従って順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
シェルとコアの両方を活用する新しいコンセプトに基づく高ダイナミックレンジの有害化学種の検出法について論文化を進めるため、補足データの収集を行う。また、気相系の実験準備も整ったことから、気相有害ガス分子の高感度検出について実験を開始する。最初のターゲットとしては硫化水素を対象とする予定であり、液相系で旋光実験を行ったCuOシェルをそのまま用いて実験を行う。 一方、テラヘルツ帯に該当する低エネルギー振動領域の計測をコアシェル型ナノ粒子に適用するための準備も進め、ガス分子の表面特異吸着について低エネルギー振動モードの直接観察に向けて技術的基盤を整備する。具体的には低エネルギー領域の表面増強ラマン測定で常に問題となる電子ラマン散乱の寄与について、通常の金属ナノ構造体との違いを明らかにする必要がある他、酸化物シェル自体からの信号についても確認をする予定である。
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