2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative cognitive research on culture and social transmission of tool use in Asian elephants
Project/Area Number |
21F40311
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NACHIKETHA SHARMA RAMAMURTHY 京都大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2021-09-28 – 2024-03-31
|
Keywords | ゾウ / 道具使用 / 道具制作 / 物理的知性 / 動物園科学 / 認知実験 / 死児運搬 / 死生観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象とするゾウは、類人猿同様に高い知性を持つ動物であると考えられているが、そのことを実証的に示した研究は驚くほど少ない。外国人特別研究員(研究分担者)が培ってきたゾウを扱う経験・知識と、受入研究者(研究代表者)が類人猿で確立してきた比較認知科学的手法とを相乗的に組み合わせ、ゾウの認知研究を新しく立ち上げた。 京都市動物園と豊橋総合動植物公園において、飼育ゾウを対象に観察および実験をおこなった。2園あわせて11頭のゾウが飼育されており、10頭を超えるゾウを対象とした実験研究は日本はもとより世界的にみても非常に少ない。本年度(2021年10月からの半年間)は、主に道具使用にかんする観察・実験をおこなった。 観察では、ゾウが自身の身体を枝を使ってこするという道具使用が確認できた。野生でも観察されている道具使用だが、野生下では困難な詳細なビデオ撮影に成功した。落ちている枝をそのまま使うだけでなく、枝を折り取って長さを変えていることがわかった。身体部位や用途にあわせて道具の長さを調節して道具を制作している可能性が示唆された。今後観察事例を増やしてより詳細な分析をおこなう予定。 実験では、ゾウにおける物理法則の理解および因果推論能力について調べる準備を進めている。道具使用において重要だと考えられる知性である。具体的には、エサをゾウの届かない場所に置き、長さや形状・性質などが様々な道具を提示して、ゾウの道具選択を調べている。本年度はこれらの予備実験をおこない、動物園スタッフと綿密な打ち合わせをおこなった。 また、ゾウの死児運搬にかんするYoutube動画の分析をおこない、ゾウの死生観についての考察をおこなった。Royal Society Open Scienceに論文が受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この半年間は、日本国内の動物園での飼育下ゾウを対象に研究をおこなった。京都市動物園と豊橋総合動植物公園という、日本でも有数のゾウ飼育施設である2園の協力を取り付けた。コロナ禍が長引く状況にもかかわらず、実施困難なゾウでの認知研究の立ち上げに成功している。予備実験の過程で想定外の問題や制約にもいくつか直面したが、現場スタッフとのコミュニケーションを密にとりつつ、着実に進展していると言える。本実験にはまだ至っていないが、入念な予備実験を繰り返しており、来年度の早い段階で本実験をおこなえると期待している。 インドでの野生ゾウ研究については、コロナ禍ということもあり、今年度は渡航できなかった。しかし、現地協力機関とは継続的にやり取りしており、来年度の早い段階で渡航できるよう準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、国内動物園での飼育ゾウを対象とした観察・実験を継続する。観察については、ゾウの道具使用の事例をできるだけ多くの個体から収集し、詳細なビデオ分析をおこなう。20例以上集まった段階で、論文にまとめる予定。実験については、まずは道具使用にかんする実験研究を軌道に乗せることを最優先させる。ゾウを対象とした認知実験は非常に実施が困難であるが、ひとつの実験に成功してノウハウを習得すれば、さまざまな認知実験に応用できると考えられる。道具的知性の検証に限らず、社会学習や他者理解といった社会的知性にかんする認知課題などもおこなうことができるだろう。順次、アジアゾウにおける道具使用「文化」および社会的伝播というテーマに沿って、多角的な視点からの実験研究を推進する。 すでに京都市動物園と豊橋総合動植物公園という日本を代表するゾウ飼育動物園2園の協力を得られてはいるが、さらに協力してくれる動物園・飼育施設の開拓をおこない、ゾウ研究ネットワークを構築する。具体的には、円山動物園や市原ゾウの国などを考えている。とくに市原ゾウの国には10頭のゾウがいるため、京都市動物園と豊橋総合動植物公園とあわせると20頭を超える。世界的にみてもこれだけの数のゾウを対象とした認知研究は非常に珍しい。 コロナ禍が落ち着きしだい、インドでの野外調査も再開する。インドには野生ゾウはもちろん、エレファントキャンプと呼ばれる半野生環境に住む人馴れしたゾウも多数いる。このような人馴れしたゾウを対象とした認知実験の可能性も探る。野生ゾウについては、外国人特別研究員にはすでに十分な経験・ノウハウがあるので、渡航でき次第、スムーズなデータ収集が可能である。
|
Research Products
(6 results)