2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the standard theory for mysterious gamma-ray glows from thunderstorms
Project/Area Number |
22KF0190
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎戸 輝揚 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20748123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DINIZ GABRIEL 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | Atmospheric physics / 高エネルギー大気物理学 / 雷雲ガンマ線 / gamma-ray glow / 雷雲プロジェクト / 宇宙線 / cosmic ray |
Outline of Annual Research Achievements |
日本海沿岸の冬季雷雲では、雲内の強い電場により電子が相対論的な領域まで加速され、大気にぶつかることによってガンマ線帯域まで伸びる制動放射が地上に降り注ぐ現象「雷雲ガンマ線(gamma-ray glow)」が観測されてきた。この現象には宇宙線空気シャワー中の電子が種として関わっていると考えられる点で宇宙線物理学と、加速された電子が雷放電のトリガーに関わっているかは大気電気物理学とも関係するなど、学際的な研究テーマとして着目されている。これまで京都大学・理化学研究所を中心とするチームで、地上に設置した放射線モニタによる多地点観測により、雷雲ガンマ線が複数観測されてきた。本研究では、これらに理論的な枠組みでの説明を与えることを目指した。Diniz 氏を中心に、素粒子物理学で使われている粒子飛跡のモンテカルロシミュレーションツール Geant4 を用い、大気中に強い電場が存在する場合の電子の加速、制動放射のガンマ線の大気中での減衰などを総合的に計算する枠組みを構築し、これまでに実測されたガンマ線スペクトルとの比較を行った。また、強い電場による相対論的な電子の雪崩増幅についての理論的な検討・議論や、この過程の種となる宇宙線空気シャワー中の現実的な電子を考慮するなどの工夫も行った。その結果、観測結果を説明することができる電場強度やその広がり、高度などについて現実的な解を得ることができた。また、今後の観測の指標になるような雲内・地上での鉛直および水平方向のガンマ線・電子分布の理解を進めることができた。これらの成果は2022-2023年度にかけて3本の学術論文として出版され、1本が投稿中である。Diniz 氏を中心にした研究は、雷雲ガンマ線を発生する電場による電子加速機構の標準理論の一端を成すものとなった。今後、国際的な連携を強化しつつ、観測・理論研究を進展させていく予定である。
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