2023 Fiscal Year Research-status Report
カゴメ磁性体における新機能発現を目指したトポロジカル現象の探索
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22KF0206
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 裕之 京都大学, 工学研究科, 教授 (00202218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AHMED MOHAMED 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | カゴメ格子 / ScFe6Ge4 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度に、二重層カゴメ格子を内包する六方晶金属間化合物ScFe6Ge4が興味深い物質であることを新たに発見した。本物質は、従来、磁化が小さい強磁性体であると報告されていたが、実際には650Kという高い転移点をもつ強い反強磁性体であることが分かった。本物質はよく知られたトポロジカル強磁性体Fe3Sn2(キュリー温度650K)と同等の二重層カゴメ格子を内包する、ことが注目される。すなわち、Fe2Sn2中のSn8十二面体をScを重心位置においたScGe8十二面体に置き換えただけの構造をとる。従って、ScFe6Ge4はトポロジカル強磁性体Fe3Sn2の反強磁対照物質として極めて興味深い。令和5年度は特に核磁気共鳴実験や第一原理計算を行い、同物質が反強磁性体であることが理論的にも合理的であることを明らかにし、結晶構造の考察や内部磁場の各元素サイトの内部磁場の有無から候補となる反強磁性磁気構造を提案した。以上の成果を論文として出版した。また、フランスのグループと共同研究として中性子回折実験を提案し、既に採択され、マシンタイムを確保した。令和6年度にフランス・グルノーブルのラウエ・ランジュバン研究所(ILL)で実験を実施する予定である。また、単結晶育成にも取り組んだ。フラックス法やテトラアーク炉を用いたチョクラルスキー法では成功しなかったが、最終的には坩堝に工夫を加えた修正ブリッジマン法で結晶の育成に成功した。今後は単結晶を用いてさまざまなトポロジカル物性を測定する段階に進む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ScFe6Ge4という新物質発見で成果があり、その結果を論文として公開できた。また、難易度が高いと予想された単結晶育成にも、様々な試行錯誤を経て最終的には成功した。単結晶が得られたことで、今後の幅広い研究展開が期待できる。その他、いくつかのカゴメ格子物質の研究も並行して行っているが、集約に時間を要している。研究期間終了までに総括予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ScFe6Ge4の単結晶試料が得られたところなので、今後、トポロジカル物性の議論に直結する物性測定を目指す。また、粉末中性子回折実験を行い、磁気構造の決定を目指す。さらに、結晶の質や大きさの向上を目指した結晶育成法の改善に努力する。また、六方晶C14型ラーベス相AB2のBサイト(2aと6hの2サイトからなる)が結晶学的に秩序化した相の開発も目指している。すなわち6hサイトのみを磁性元素にすれば、理想的なカゴメ格子金属磁性体となる。研究期間内にその一例を提示することを目標とする。
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