2022 Fiscal Year Annual Research Report
Femto and Attosecond Dynamics in Solution
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22F22337
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 俊法 京都大学, 理学研究科, 教授 (10192618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BOYER ALEXIE 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-11-16 – 2025-03-31
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Keywords | ウラシル / チミン / 光化学 / 内部転換 / 光安定性 / 超高速分光 / 光電子分光 / 置換基効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸塩基の1pp*状態から基底電子状態(S0)への高速な電子緩和や(光化学反応を起こす可能性のある)1np*状態や3pp*状態への緩和過程の量子収率(QY)を検討した。既にウラシル(Ura)、チミン(Thy)の気相孤立状態を調べたところ、1pp*状態は17fs(Ura)や39fs(Thy)という驚くべき短寿命で電子緩和するが、それらはかなり高い量子収率(QY;0.45(Ura),1.0(Thy))で1np*状態に緩和することが確認されていた。しかし、水溶液中のNBでは1np*状態のQYは0.07以下(Ura)ならびに0.2以下(Thy)と低く、S0への緩和が主であった(nucleoside, nucleotideでも同様)。水溶液中で1np*のQYが低くなる理由は、1np*状態が水素結合によりエネルギー的に不安定化し、1pp*からの電子緩和過程に寄与しにくくなるためである。さらに興味深いことに、ThyとUraの分子構造はメチル基の有無しか異ならないにもかかわらず、UraのS0への内部転換が遙かに速いことが分かった。その原因は、これらの分子の1pp*状態からS0への電子緩和がC5の置換基が面外に突き出た構造を経ることにある。C5にメチル基が入ると嵩高いメチル基の面外運動が水和殻との立体障害で抑制されるため、Thyの1pp*状態の寿命が長くなり、1np*状態のQYも高くなるのである。この点をさらに調べるために、C6をメチル化した6-methyluracil やC5にFを導入した5-Fluorouracilを研究したところ、前者ではダイナミクスがUraを殆ど異ならず、後者ではThyと類似の挙動が観測された。よって、C5のメチル基の重要な寄与が明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UracilとThymineが大きく異なる緩和速度を有し、それがC5の位置へのメチル基の導入に起因することを明確にしたことは特筆に値する。UracilとThymineのポテンシャルエネルギー曲面は高精度の量子化学計算(MS-CASPT2)でも違いが無いことから、水溶液中での両者のダイナミクスの差は溶媒の動的応答に帰着される。これらの分子の1 pp*状態からS0への電子緩和は、必ず非平面の構造を通過しなければならないが、Thymineの場合にはC5に置換されているメチル基が嵩高いために水和殻との立体障害を経験し、この決定的な構造(ポテンシャル曲面の円錐交差点)に到達するには溶媒の再配向が必要となり反応速度が低下するのである。
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Strategy for Future Research Activity |
真空中に導入された試料溶液を再循環させる装置を開発・導入し、生体試料や希少試料の実験を可能にする。高繰り返しレーザーの出力パルス時間幅をmulti-plate法で30fs以下に圧縮して光子密度を上げ、繰り返し周波数100kHz以上でEUVが発生できるようにする。また、アト秒の実験を実現するためのpump-probe遅延時間の精密な制御装置の開発を行う。
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Research Products
(2 results)