2021 Fiscal Year Annual Research Report
Enhanced Circularly Polarized Luminescence of Single Molecular Layers
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21F21336
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
REINE DIAZ PABLO 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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Keywords | 円偏光発光 / 希土類錯体 / 蛍光 / 結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子の円偏光発光(CPL)を制御することは将来のセンサーや表示デバイスの高効率化や高度な量子暗号通信などの新機能の実現のため重要とされている。有機分子のCPL特性を増強する研究が進められてきたものの、分子ごとの構造多様性や配向に対して極めて大きな依存性を有することから、その全容解明に向けた検討はいまだに進められていない。特に方位依存性は大きく、本質的に遷移電気双極子モーメントと磁気遷移双極子モーメントの双方に直交する方向に放射される光子において円偏光発光は最大となると予測されるものの、いまだにその実証は行われていない。本研究では有機発光分子のCPLが観測方位にきわめて大きな依存性を有することに着目し、これを制御することで、増強されたCPL発光の実現を目指している。左右円偏光の強度比の目標値を75:25とし、さらに完全円偏光(100:0)となるCPL分子を目指している。このためには方位制御が絶対必要であることを考慮し、発光材料の化学のブレークスルーを目指すものと位置づけている。キラルな分子の合成や評価は、製薬化学の中心課題であるばかりでなく、ぎらつきの小さい室内照明の実現など、次世代の電子デバイスの基盤となりえる。本研究ではこのような次世代照明を志向した円偏光発光材料の学理開拓を目指す。強円偏光発光性分子や錯体について計算と合成を進め基板上への固定化と強発光性を両立する分子設計を検討する。光学計測に関する海外研究チームとの共同研究を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では光学キラリティーの方位依存性の解明にもとづく、円偏光発光材料開発の学理開拓を目指しており、1)円偏光発光分子の固体表面上への固定化、2)高感度円偏光蛍光観察、3)円偏光蛍光のデータ解析の3項目について実施する。2021年度には、主に1)に取り組み、円偏光発光性分子の合成とその基盤表面への固定化について検討した。これまでに報告されている強円偏光発光性分子や錯体について合成を進め、基盤への固定に向け結晶構造の検討を進めた。特に、キラルユニットが含まれない希土類錯体において特有の円偏光発光現象を見出し、これが自発的なキラル分晶によるものであることを見出した。結晶構造解析の結果、この錯体はEu(III)イオン6核を含むかご状錯体結晶から構成されることや、キラルなかご状希土類錯体が二次元面内には網目構造を形成し、さらに層状構造を形成し多層化していることを見出した。二次元網目構造の形成においては、Na-F間の配位相互作用が連結部となっていることが見いだされた。さらに、この結晶を溶媒中に分散しても円偏光発光性が保持されることを見出し多層結晶構造の層関剥離によるものと推定した。錯体のキラル分晶は多数報告されているものの、その円偏光発光は1例しか知られておらず極めてユニークな材料といえる。キラルな層状結晶化合物を利用することで円偏光発光分子の基板上への固定化が可能になると期待される。また2)3)についても量子化学計算など準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には引き続き、円偏光発光性希土類錯体分子のバリエーションの解明を進め基板上への固定化に最適の構造を探索する。特に層間の接合にはF/F間の相互作用がみられることから相関剥離した場合には、シリコンSi等の基板上に対して選択的に吸着することが期待される。このことを想定し、溶媒中への分散とともにSi基板上への化学吸着による固定化法を検討する。Si原子はF原子と特異的な親和性を示すことを利用するほか、水素終端化することによりSiH/F相互作用を利用するなども考慮し基板上への固定化について検討する。固定化ができれば2)高感度円偏光を利用し円偏光発光の観察に取り組む。この方法により観測方位による円偏光発光性の系統的な検討が初めて可能となる。さらに3)円偏光蛍光のデータ解析について検討する。
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Research Products
(2 results)