2023 Fiscal Year Research-status Report
アリ類のコロニー内栄養循環における栄養卵の機能と意義
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22KF0280
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KHALIFE ADAM 香川大学, 農学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 栄養卵 / 働きアリ繁殖 / 栄養経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨナグニアシナガアリとアシナガキアリを対象に、栄養卵の消費のされ方と、繁殖卵と栄養卵のタンパク質量を測定した。2種ともに、先行研究と同様に、栄養卵は主に幼虫に与えられたが、コロニーによっては女王も摂食した。2種ともに、栄養卵のほうが繁殖卵よりもタンパク質の割合が高かった。この結果は、働きアリが産む栄養卵は栄養分に富み、幼虫の成長や女王アリの卵生産に重要な役割を果たしていることを示している。これらの結果を、マレーシアで開催されたアジア・アリ類研究国際ネットワーク(A-net)の大会と、仙台で開催された日本昆虫学会・応用動物昆虫学会合同大会で口頭発表した。繁殖卵と栄養卵の脂質と炭水化物量の測定はできなかったが、残り期間で実施する予定である。ヨナグニアシナガアリの観察中に、形態が女王と働きアリの中間的特徴を示すインターカストが5コロニーで合計7個体生産されていることを発見した。これらの個体の形態的特徴を詳細に観察し、働きアリ・女王アリと比較した。インターカスとは、いずれも受精のうを持つものの、そのサイズは小さく、機能的ではないと考えられた。各部位の大きさは、個体によって様々で、女王的形質と働きアリ的形質の発現様式は多様であった。これらの結果にもとづき、コロニーにおけるこれらの異常な表現型のモジュール化された発達について議論し、アリの進化におけるインターカストの潜在的な役割について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栄養卵と繁殖卵のタンパク質量の定量方法を確立することができたが、脂質量や炭水化物量については残り期間で方法を確立して、実施する予定である。また栄養卵の利用様式についての観察も十分にすることができた。これらのことから、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
栄養卵と繁殖卵のタンパク質量・脂質量や炭水化物量について調査する予定である。現状ではヨナグニアシナガアリとアシナガキアリの2種を対象にしているが、対象種を増やす予定である。また、関係研究者らと連携して、アリ類における栄養卵についての総説をまとめ始める予定である。
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Causes of Carryover |
天候などの都合で予定していた野外調査に行くことができなかったため。
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