2022 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外光を可視光にアップコンバージョンするMOFの創出
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22F21333
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PARMAR BHAVESHKUMAR 九州大学, 工学研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | フォトン・アップコンバージョン / 多孔性金属錯体 / 励起三重項 |
Outline of Annual Research Achievements |
低エネルギー光を高エネルギー光に変換するフォトン・アップコンバージョンは太陽電池や人工光合成の効率を飛躍的に向上させるとして期待されている。中でも近赤外光から可視光へのフォトン・アップコンバージョンは太陽電池や人工光合成といったエネルギー分野に加え、オプトジェネティクスや光線力学療法といったバイオ分野への応用も期待されている。しかし、これまで固体中におけるフォトン・アップコンバージョンは効率が低いという問題があった。本研究では金属イオンと架橋配位子からなるmetal-organic framework (MOF)中に色素を規則的に配列させることで、高効率なフォトン・アップコンバージョンを示す固体材料の開発を試みた。 近赤外光を可視光にフォトン・アップコンバージョンするMOF材料を実現するため、発光色素を精密に集積したMOFの設計と合成に取り組んだ。本年度は特に配位子及びMOFの合成に注力した。テトラセンなどのアセン系色素に金属配位部位として複数のカルボン酸を導入した分子を合成した。複数の合成ルートを探索した結果、高い収率でMOF構築を系統的に検討するために必要な量の色素含有配位子を合成することに成功した。色素分子が合成できたことはNMRや質量分析により確認を行った。得られた色素含有配位子と反磁性の金属イオンとの錯形成により新規MOFの構築を行った。配位子と金属イオン、更に補助配位子の組み合わせを変化させ、合成の際の溶媒や温度といった条件を変化させることで最適な合成条件の探索を行ったところ、複数種類のMOFの合成に成功した。X線構造解析により密に色素部位が集積したMOFが形成されたことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では近赤外光を可視光へとフォトン・アップコンバージョンするための多孔性金属錯体(MOF)の創出を目的としているが、本年度は近赤外光によって増感可能なほど低い三重高エネルギーを有する色素ユニットを用い、カルボン酸などの金属イオンへの配位部位を導入した配位子の合成に成功した。更に得られた配位子を用いて反磁性金属イオンと錯形成させることにより、色素ユニットが密に集積した新規な多孔性金属錯体の合成に成功した。本研究の目的を達成するために必要な新規材料の合成に成功していることから、おおむね順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、近赤外光で増感できるほど低いトリプレットのエネルギー準位を有する色素ユニットを含むより多様な配位子を合成し、金属イオンと錯形成させることで色素集積型MOFのライブラリーの拡張に取り組む。得られたMOFの光特性を発光、吸収スペクトルや発光寿命測定、過渡吸収測定により評価し、さらにはMOF中のトリプレット状態を過渡ESRを用いて評価していく。トリプレット増感剤を導入してフォトン・アップコンバージョン特性をレーザー分光により評価する。更にはフォトン・アップコンバージョンの逆過程であるシングレット・フィッションも起こることが予想されるため、過渡吸収分光や時間分解発光測定により評価を行っていく。
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Research Products
(1 results)