2022 Fiscal Year Annual Research Report
Toward a theatre anthropology-between bori and kagura
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22F21734
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
藤田 隆則 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 教授 (20209050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHAABANE AYMEN 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-07-27 – 2024-03-31
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Keywords | 民族音楽学 / ボリ / 伝統 / エスノシーノロジー / スタンバリ / 神楽 / 演劇化 |
Outline of Annual Research Achievements |
学術振興会の支援のおかげで、調査研究とフィールドワークを遂行することができた。具体的には、神楽をつうじて信仰の実践がおこなわれているさまざまな地域への調査旅行、古代の神楽の実践にかんする知識をもっている、主たる研究者との交流をおこなうことができた。また、インタビュー、撮影などの資料も蓄積することができた。 具体的にいうと、松江市と出雲市を訪問して調査をおこない、神事の記録をおこなった。松江市においては、島根大学、島根県立大学ほかにおいての文献調査をおこなって、島根県における神楽研究の全体像を把握することができた。さらに、出雲一宮である佐太神社において実践されている、佐陀神能の記録をおこなうことができた。佐太神社では、出雲以外の地域から、神楽のグループをまねいて、複数の神楽を共演させるというイベントも開催された。そのイベントを記録することによって、出雲地域における神楽享受および神楽理解の一様相に、あらたにふれることができた。また、京都府内の天橋立にある智恩寺、京都府内の岩清水八幡宮などを訪問し、神職へのインタビューをおこなうことができた。ここでは、神仏習合の思想を学ぶことができた。日本の神楽は、神道だけではなく、仏教の儀礼とも深くまじわっているということが理解できた。文献収集にかんしては、早稲田大学、南山大学の図書館を訪問して、文化人類学や宗教学を中心にして、必要な文献を集めることができた。 また、初年度を総括するために、「ボリ」と呼ばれるアフリカの儀礼音楽と日本の神楽を比較研究するための公開講座を開催した。そこでは、日本で活躍する北アフリカ音楽の演奏者・研究者、神楽の映画を作成したプロデューサーなどとの対話を深めて、2つの離れた文化の実践を比較することの意義と可能性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にてらし、さらに、研究全体のゴールをみすえた上で、初年度において、おこなうことができたのは以下の4項目である。 1、社会関係の理解。具体的には、共同体のコミュニティを中心と考える考え方と、神仏習合にかんする知識などに特徴づけられた社会関係を理解したこと。 2、それぞれの宗教の宗派がもっている普遍的価値の理解、宗派が理想としてかかげている名目の価値、その背後で抽象的に語られる価値などを理解したこと。 3、日本の様々な地域でおこなわれている神道の神楽にかんする人類学的な調査をおこなえたこと。 4、大学図書館を中心に情報を収集し、フィールドワークにおいて情報提供者と出会い情報交換をおこなうことができたこと。 以上はすべて、ボリと神楽とのあいだの比較調査研究を、理論的、実践的の両面において深めていくという文脈の中で、おこなわれた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究プランに照らしてみると、これまでの情報収集を中心とする調査は、まだ十分におこなわれているとは言い難い。わずか1年の間に、当初のプランを予定どおりに実行することは、困難であったという認識を、申請者はもっている。その理由のひとつが、研究対象としなる神楽が、日本において実施される時期が、すべて冬季に集中しているということである。そのため、調査は、数箇所において集中的におこなうことしかできず、全体をひろくみわたす調査が不可能であった。その認識および反省をふまえて、本年度は、本来は初年度におこなうべきであった、九州地方の神楽の調査を追加しておこなうこととしたい。
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