2024 Fiscal Year Annual Research Report
近代における中国語と日本語の語彙間のコミュニケーションの歴史について
Project/Area Number |
22KF0357
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
胡 士雲 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授
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Project Period (FY) |
2023
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Keywords | 国民性 / 国粋 / 民族性 / 人民性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本学で二年間の共同研究において、李先生が学会発表計2回、国際シンポジウム計3回参加しました。本学の『グローバル・コミュニケーション学部紀要』に論文を2本投稿したほかに、また大東文化大学の研究雑誌に論文を4本投稿しました。 国民性(nationality)という概念は近代民族国家理論の核心概念であります。日本は江戸末期からこの概念を取り入れ、「民性」「民情」「国体」「国風」「国粋」「国種」「愛国心」「国質」「国民性」など数多くの漢語に訳されました。その後、梁啓超、魯迅などの清末知識エリートはまさに明治日本の国民性思想を吸収し、それを中国に伝え、清末民初の中国社会世論に大きく影響し、中国の近代政治変革の方向と民族国家建設のプロセスを左右しました。中国共産党の誕生に伴い、中国の政治生態も重大な変化が発生し、「nationality」という概念を「人民性」に再翻訳しました。これは現在の「国民性」の言葉の式微であり、「人民性」の言葉が主流の根源となっています。 言語学における意味学の言葉や概念に対する認識とは異なり、概念史は概念を歴史現実における経験と期待、観点と解釈モデルの集合体と見なします。概念はコードネームであり、思想の出口でもあります。そのため、特定の概念の慣用には慣習的な思想が含まれています。また、概念史の研究対象は単一の概念ではなく、概念体系の全体的な表現次元とその経緯であります。 李先生は概念史の研究方法を活かして、中日両国間に共有された「国民性」「民族性」「人民性」「国粋」「国性」等諸概念をより綿密に考察しました。李先生との共同研究は近代西洋の「nationality」という概念を中心に如何に中日両国間に伝播されたのか、如何に翻訳されたのかを明らかにしました。李先生の研究目標を達成したことを高く評価します。
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