2023 Fiscal Year Annual Research Report
近代アジアの政治形勢における日本とチベットとの関係
Project/Area Number |
22KF0374
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
吉水 千鶴子 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (10361297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GAZANGJIE gazangjie 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | チベット / 日本におけるチベット研究史 / チベット留学生 / 河口慧海 / 多田等觀 / 中根千枝 / ダライラマ13世 / 東洋文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に日本におけるチベット学の誕生、発展の歴史や現状に注目し、日本のチベット研究史を全体的にまとめることを試みた。中国タル寺や青海省档案館、甘粛省档案、チベット自治区档案館、ポタラ宮古籍整理中心、ノブリンカ管理中心などで資料を収集し、併せてこれまでに収集した日本語・中国語・チベット語の資料を用い、近代アジアの政治形勢におけるチベットと日本との関係を押さえながら、戦前の河口慧海や多田等觀、青木文教、戦後東洋文庫のチベット研究の軌跡や研究成果などを整理した。そして、当時の13世ダライラマと日本の仏教界との交流、さらには、チベットからの留学生来日、日本からチベットへの留学生派遣という留学生交換によって相互理解が深まり、相互の仏教についての知識を得ることができた実態を資料から解明し、これが日本のチベット研究の誕生に大きく寄与したことを論じた。 その後の日本のチベット研究の発展は、1901年から1961年までにチベットへ入った河口慧海や寺本婉雅、能海寛、多田等観などがチベットから持ち帰った文献資料の研究に基づいている。そして、チベット仏教の経典翻訳、チベット仏教大蔵経目録の編纂、チベット語やチベット仏教の研究が行われ、彼らの弟子である山口益、羽田野伯猷、長尾雅人、佐藤長、北村甫、中根千枝、山口瑞鳳、星実千代などが、仏教、歴史、言語などの幅広い分野で成果を挙げた。この時代にも、亡命チベット人の学僧が来日し、東洋文庫などで研究に協力していたことから、背景には変わらず、チベットとの交流が日本のチベット研究を支えていたことが明らかになった。
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