2022 Fiscal Year Annual Research Report
野生動物保全とワンヘルスのためのヒトとゴリラの社会的絆の共創
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22F22011
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
林 美里 公益財団法人日本モンキーセンター, 学術部, 部長 (50444493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PEREIRA COSTA RAQUEL FILOMENA 公益財団法人日本モンキーセンター, 学術, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ゴリラ / ワンヘルス / 人獣共通感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、動物園にくらすゴリラと来園者・飼育者との関係性に着目し、科学や保全の立場からワンヘルスを考えた展示を推進し、一般の関与を促進することを目指す。具体的には、1)ゴリラが来園者や飼育者を社会的ネットワークに組み込んでいるか、2)来園者はゴリラの行動をどのように捉えているのか、3)ゴリラにとってヒトとのかかわりがストレスになっているのか、という3点について調べる。本年度は、日本モンキーセンターにくらすニシゴリラのタロウを対象として、1)来園者や飼育者がゴリラに与える影響に着目したゴリラの行動観察、2)ゴリラの行動や野生動物とのつながりの感じ方に関する来園者へのアンケート調査、3)ストレスホルモン分析用の糞サンプルの収集と保管をおこなった。また、飼育下における本研究を構想する基盤となった、野生ゴリラの行動や社会性に観光客が与える影響について調べた研究成果について、2編の論文として『Journal of Ecotourism』誌と『Conservation Science and Practice』誌にて公表した。観光客が観察の際のルールに違反して野生ゴリラに近接しすぎた場合に、ゴリラの行動が変容し、ゴリラ同士の凝集性も高まるという結果が得られ、人獣共通感染症への罹患リスクが高い状況になりやすいことを明らかにした。これらの成果について、2023年2月26日に第67回プリマーテス研究会にて口頭発表をするとともに、日本モンキーセンターのミュージアムトークとして、2022年9月25日に一般向けの講演会を実施した。また、日本学術振興会サイエンス・ダイアログとして、2023年2月1日に岐阜県立恵那高等学校で講演をおこなった。さらに、集団でくらすゴリラを対象とした研究について、東山動物園での研究実施に向けて、園側との研究打ち合わせと共同研究としての申請をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年2月に男児を出産したため、2022年度中は家庭での育児と研究を両立する必要があった。配偶者及び義父母の協力を得ながら、日本モンキーセンターでのゴリラの行動観察と来園者のインタビュー調査、論文執筆等の研究活動を実施した。限られた時間ではあったが、2編の論文の刊行と、3件の学会発表・講演をおこなうとともに、日本モンキーセンターにおける当初計画通りの研究データを取得することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度からは保育園が利用できる状況となったため、より高頻度で東山動物園でのゴリラ集団の行動観察と、来園者のインタビュー調査を実施する。また、アメリカでのストレスホルモン分析のための糞サンプルの輸出手続きと準備を進める。日本モンキーセンター及び東山動物園で取得した研究データをまとめ、論文を執筆する。野生ゴリラの行動データを新たな研究手法を使って分析した結果についても、論文を投稿予定である。研究成果の一部は、第39回日本霊長類学会 (神戸、7月7-11日) およびポルトガル霊長類学会公開会議 (Almada、3月11日)にて発表する。
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