2022 Fiscal Year Annual Research Report
休眠時低温耐性を理解するためのマウスを用いた新規in vitro評価系の開発
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22F20758
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
砂川 玄志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70710250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
COUNTRY MICHAEL 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2022-07-27 – 2024-03-31
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Keywords | 冬眠様状態 / 網膜 / 神経初代培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は神経系が冬眠を誘導しているという仮説の検証に向けた基礎的な研究を進めた。具体的には、マウスも網膜をモデルとして、視神経は切断するが血液の供給は維持されている状態を作成した。網膜は冬眠中に代謝が低下していることが予想されているが、血流のみを維持した状態で代謝がどのように変化するか観察することで、網膜の低代謝が神経あるいは血液由来かを明らかにすることができる。 視神経切断が成功すれば、視細胞は機能するものの、網膜の光刺激が脳へ到達しなくなる。このことを確認するために暗室とERG装置を設置した。網膜の代謝を評価するために、シーホースXFe24アナライザーを使用し、マウス網膜の代謝測定系を確立した。視床下部に存在するQRFPペプチド含有神経を特異的に興奮し冬眠様状態を誘導できるマウス(Qマウス)を用いて、冬眠様状態のマウスから採取した網膜の代謝を評価したところ、対照群と比較して代謝が高いことが示された。XFe24アナライザーでは冬眠様状態の低代謝を検出するには遅すぎる可能性があるため、ATPアッセイや蛍光グルコース取り込みアッセイ等のより早期に網膜の代謝を評価できる系の導入を進めている。 また、in vitroでマウス由来の神経の代謝を評価スラウために、マウスの初代神経細胞の系を立ち上げた。最長で神経を1ヶ月間培養し続けることに成功しており、広範な樹状突起と軸索のネットワークの形成が確認できている。今後、この初代培養を用いて代謝や神経機能の測定を評価する系を導入し、冬眠のトリガーとなる分子の検索を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新たな装置の導入、暗室の設置、そして次年度の研究基盤となる技術を取得した。当初計画では、幹細胞を網膜神経節細胞に分化させることで、網膜神経細胞のモデルを作成する予定であった。しかし、この方法は安定した培養を行うことが困難であることがわかったため、神経の初代培養を用いることにした。神経の初代培養は順調に進み、細胞の構造、機能、代謝を評価する多様な手法を導入しており、これにより来年度の研究が大きく加速することが期待される。また、シーホースアナライザーは、冬眠様状態のマウス網膜の代謝を測定するには不適切であることが明らかとなったため、現在、代替法の導入に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、従来認識されていた血液の作用ではなく、神経系の作用が冬眠を誘導するという仮説の検証を行う。視神経の切断を確認するためのコレラ毒素B注射などの組織学的手法、また光に反応して網膜や脳の活動を測定する電気生理学的手法を用いて、手術結果の有効性を検証する。さらに、生化学的アッセイ(ATPや蛍光標識グルコース)やシーホースアナライザーを使用した網膜の代謝測定も実施する。また、マウスの初代神経細胞を活用し、冬眠を引き起こす可能性のある分子を投与し、代謝変化や神経機能の低下を調査する。当研究室では、冬眠中の動物から血清を採取し、それを培養細胞に適用して機能を測定する手法を開発している。このプロセスが効率化されれば、アデノシン等、他の冬眠誘発物質のスクリーニングを行い、神経細胞の反応を詳細に調査することが可能となる。これらの研究は、将来的に人間を含む哺乳類の冬眠誘導法の発見に貢献する可能性がある。
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